機能解剖学&運動生理学

運動学習①~運動学習とは~

こんにちは。

imok株式会社で活動している、理学療法士の中北です。

本日は運動学習の概要についてお話いたします。

運動学習とは

運動生理学者のSchmidtは、「運動学習とは、熟練パフォーマンスの能力に比較的永続的変化を導く練習や経験に関連した一連の過程である」と、運動学習を定義しています。

ここで注目したいのが、「練習や経験に関連した一連の過程である」という一文と、「比較的永続的変化を導く」という一文です。

「練習や経験に関連した一連の過程である」と述べられているように、運動学習とは最終的な結果の変化のみを指しているのではなく、その結果に至るまでの一連の過程のことを指します。

また、ある練習や経験が、ある運動の学習に寄与したという因果関係が特定できるものが、運動学習の概念にあてはまるとされています。

例えば、子どもが運動発達を通して1歳前後に自分で歩けるようになることを、何か特定の練習や経験をさせたから歩けるようになった、という因果関係を説明することは困難ですよね。この場合は運動学習の概念にはあてはまりません。

一方で、運動発達の遅延が見られる子どもに対して、何らかの課題を設定して運動発達を促した場合は、運動学習の概念にあてはまるということになります。

このように、最終的な結果のみではなく、結果を獲得するまでの一連の過程に介入することが運動学習を促すためには大切になります。

 

次に、「比較的永続的変化を導く」ということは、一過性の変化は運動学習の定義からは外れるということです。

Schmidtさんの例を参考にすると、水を熱すれば沸騰するという変化が生じますが、熱することを止めると元の水に戻ります。一方で、生卵を熱するとゆで卵に変化しますが、熱することを止めてもゆで卵は生卵には戻りません。これが運動学習における比較的永続的な変化だということだそうです。

より現実的な例でも考えてみましょう。

患者さんがリハビリ室で歩行訓練を行っている場面で、リハビリ室ではセラピストに介助されて患者さんの歩容が改善したとします。ところが、患者さんがリハビリ室を出て、1人で歩いた途端に元の歩容に戻ってしまっていたら、リハビリ室では一過性の変化が生じていただけで、運動学習は成立していなかったということになります。

このように、運動学習では「比較的永続的変化を導く」ということが大切になります。

運動学習の効果測定方法

運動学習の効果の有無を調べる方法としてよく用いられるのが、トランファー・デザインという実験手法です。運動学習に関する他の記事で参考にしているリサーチにおいて多用されている手法ですので、簡単にご紹介いたします。

これは、練習中のパフォーマンスの変化から、一過性の変化を排除する方法で、「プレテスト」「練習試行」「ポストテスト」の3つの要素で構成されています。

トランファー・デザインの3要素

①プレテストとは、練習を開始する前の学習者の運動レベルを測るもの。

②練習試行とは、学習目的に沿ってフィードバックの与え方や課題の並べ方、試行回数などを操作して行うもの。

③ポストテストとは、プレテストとの成績を比較し、学習の成果を判定するもの。

例えば、閉眼で10cmの横線を書くという課題があるとします。

まずは、プレテストとして5回書いてもらいます。

次に、練習試行として6回練習してもらい、2回に1度は結果を伝えます。

「2回目は7cmでした」

「4回目は12cmでした」

といった具合に。

そして、ポストテストでは30分後に再び閉眼で10cmの横線を5回書いてもらいます。

さらに24時間~数日後に2回目のポストテストを行い、その結果をプレテストと比較して効果を判定するという方法が、トランスファー・デザインの手法です。

また、ポストテストには「保持テスト」と「転移テスト」の2種類があり、保持テストでは学習課題と同様の内容をテストし、転移テストでは学習課題とは異なる内容のテストを行って、学習が転移されているのかをテストします。

このような手法で、より効果的な運動学習には、フィードバックの頻度はどの程度が良いのかといったことや、どのような事にフォーカスさせると良いのかといったことなどを比べていきます。

運動学習を促進するための具体的な方法については、他の記事で詳しくご紹介いたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

imok株式会社

中北貴之

ABOUT ME
中北貴之
中北貴之
理学療法士/健康経営アドバイザー/imok Technical Director/大手フィットネスクラブにて活動後、痛みを抱えているお客様をサポート出来る様になりたいと、理学療法士の学校へ進学。卒業後は理学療法士として整形外科クリニックへ勤務。理学療法士として活動をしながら、トレーニングやコンディショニングの学びを続け、2018年4月よりimok株式会社へ参画。治療からコンディショニング、パフォーマンスアップまでを行えるコンディショニングコーチとして、パーソナルトレーニング指導や専門家向けのセミナー講師として幅広く活動中。