機能解剖学&運動生理学

肩関節の機能解剖7|腱板の基礎知識

こんにちは。
理学療法士の中北です。

今回のテーマは「腱板」について。

腱板は肩関節を適切に機能させるうえで欠かすことのできない、重要な部分ですので、基本的な部分からしっかりと確認していきましょう!

腱板の基礎知識

腱板とは、「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」の4つの筋腱の総称で、上腕骨頭を取り巻くように付着し、肩甲骨関節窩と上腕骨頭の求心性を高めています。

肩甲上腕関節は、受け皿である関節窩に対して、上腕骨頭の方が約3倍も大きいため、非常に不安定な骨構造といえます。

そんな不安定な骨構造を安定させるためにあるのが、関節唇や靭帯や関節包などによる静的安定化機構と、腱板や上腕二頭筋長頭腱を主とした動的安定化機構。

つまり、腱板は動的安定化機構の主役といえます。

腱板の解剖学

それでは、腱板を構成する4つの筋の解剖についても確認しておきましょう。

起始部 停止部
棘上筋 肩甲骨棘上窩 上腕骨大結節の上関節面
棘下筋 肩甲骨棘下窩 上腕骨大結節の中関節面
小円筋 肩甲骨外側縁 上腕骨大結節の下関節面
肩甲下筋 肩甲下窩 上腕骨小結節
腱板の解剖イラストVISIBLE BODYで作図

 

続いては、腱板を構成するそれぞれの筋の作用です。

腱板構成筋のそれぞれの作用

①棘上筋
 棘上筋は腱板の上面を形成しており、肩関節の外転運動および、上腕骨頭を関節窩に押しつける支点形成作用があり、特に挙上動作初期で活動が高まります。
 なお、棘上筋の前部線維は上腕骨内旋に、後部線維は上腕骨外旋に作用しますが、特に前部線維の方が挙上動作の中で重要だといわれています。

②棘下筋
 棘下筋は腱板の上面から後面を形成しており、肩関節の外旋や外転に作用しています。一般的に、外転作用といえば棘上筋のイメージが強いかもしれませんが、棘下筋も外転動作における支点形成では重要な役割を担っています。

③小円筋
 小円筋は腱板の後下面を形成しており、肩関節の外旋作用を有しますが、特に第3肢位(肩関節90度屈曲、肘関節90度屈曲位)において小円筋の働きは高まります。
 また、小円筋は後方関節包とも結合しているので、後方関節包の挟み込みを防ぐうえでも重要です。

④肩甲下筋
 肩甲下筋は腱板の前面を形成しており、肩関節の内旋作用を有します。肩甲下筋の横断面積は、外旋筋群である棘上筋・棘下筋・小円筋を合わせたものとほぼ等しく、それらと協調して働くことで支点形成に寄与しています。

腱板は表層では個別に分かれていますが、深層ではそれぞれ混在しており、関節包や上腕二頭筋長頭腱とも連結しています。

そのため、個々の筋が単独で作用するというよりは、それぞれが協調して肩関節の求心位を保つために働きます。

三角筋とのフォースカップル

三角筋と腱板がフォースカップルを形成することで、上腕骨の挙上動作は円滑に遂行されます。

どういうことかと言うと、三角筋と棘上筋はともに挙上動作の主動作筋ですが、三角筋だけが単独で収縮すると上腕骨頭を上方へ引き上げるのみで、関節窩から上腕骨頭は逸脱してしまいます。

一方で、棘上筋だけが収縮しても上腕骨頭を関節窩に押しつけるだけで、上腕骨を挙上させることはできません。

棘上筋が三角筋に先行して活動し、上腕骨頭の関節窩への求心力を発生させたうえで、三角筋の収縮が行われることで、上腕骨の挙上動作が成り立っているわけですね。

なお、棘下筋と肩甲下筋は、上腕骨頭を下方に引き下げる作用を有しているので、三角筋の上方に引き上げる作用に対して拮抗する形となります。そして、棘下筋と小円筋は上腕骨頭を外旋させるので、上腕骨大結節が肩峰下を通過するのを円滑にしています。

三角筋とのフォースカップルの話では棘上筋だけがクローズアップされやすいですが、その他の腱板筋群も上腕骨の挙上動作には深く関わっていることが分かりますね。

今回は肩関節の主役の一つである腱板についてお話いたしました。
腱板は、上肢がスムーズに動くための支点形成を担う重要な動的安定化機構ですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※参考文献および書籍
・信原克哉:肩診療マニュアル第3版.医歯薬出版.2004.
・赤羽根良和:肩関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社.2013.
・坂井健雄監訳:グラント解剖学図譜第6版.医学書院.2011.
・村木孝行:肩関節痛・頸部痛のリハビリテーション.羊土社.2018
・肩関節インピンジメント症候群.臨床スポーツ医学.Vol30.No5.2013