機能解剖学&運動生理学

肩関節の機能解剖5|関節可動域の評価とは

こんにちは。
理学療法士の中北貴之です。

本日のテーマは「肩関節の関節可動域評価」についてです。
主に、肩甲上腕関節周囲の軟部組織性由来の関節可動域制限についてお話いたします。

関節可動域制限の原因とは

肩関節に限らずですが、関節の可動域制限を大別すると「パーツの問題」と「動作パターンの問題」に分かれます。

「パーツの問題」とは、組織の癒着や滑走性低下などによる軟部組織性の制限や、変形などによる骨性の制限を指し、肩関節でいうなれば”拘縮肩”や”変形性肩関節症”の状態で、Passiveでも明らかな可動域制限がある状態です。

「動作パターンの問題」とは、Passiveでは可動域制限がないにも関わらず、Activeになると制限が生じる状態です。他関節との協調性や運動制御、モーターコントロールの問題と言っても良いかもしれません。

肩関節周囲炎になると、炎症後に組織の癒着などによって可動域制限が生じることがよくあります。

五十肩とは?

一般的に広く知られている五十肩とは”有痛性肩関節制動症”などと呼ばれ、肩関節周囲炎の中の一つに分類されます。

その他の肩関節周囲炎には、腱板炎や上腕二頭筋長頭腱炎、肩峰下滑液包炎などがあり、肩関節周囲には炎症を生じさせる様々な病因が存在します。肩が痛い=五十肩ではないということですね。

肩甲上腕関節の可動域評価とは

それでは、肩甲上腕関節の評価方法と、制限因子について考えていきましょう。

肩甲上腕関節の可動域評価としては、「1stポジション」「2ndポジション」「3rdポジション」で評価が一般的かと思います。

1stポジションでの肩関節の内旋外旋可動域のイラスト1stポジションにおける関節可動域
2ndポジションでの肩関節の内旋外旋可動域のイラスト2ndポジションにおける関節可動域
3rdポジションでの肩関節の内旋外旋可動域のイラスト3rdポジションにおける関節可動域

 

例えば、2ndポジションでは問題ないのに、1stポジションになると外旋可動域が低下したとします。より上腕骨が内転した位置で可動域が低下しているので、前上方の組織が関与しているのかも?と介入する組織が絞れていきます。

同様に1stポジションでは問題ないのに、2ndポジションになると内旋が制限されたとすると、今度は後下方の組織が怪しいな~と絞れていきます。

このようにして制限因子を推測して介入していくことで、とりあえず闇雲にあっちもこっちも介入しておけ~、という介入方法よりも、当然ながらクライアントさんの負担は軽くできます。

ある程度推測が出来たら、後はその推測が合っているのかを確認しながら介入していくと良いかと思います。

上記の他動的評価において問題が無ければ、他関節の問題か、動作パターンの問題が考えられますね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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※参考文献
信原克哉:肩診療マニュアル第3版.医歯薬出版.2004.
赤羽根良和:肩関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社.2013.
肩関節周囲疾患の機能解剖学的病態把握と理学療法.理学療法30(6).2013.