機能解剖学&運動生理学

筋の滑走を円滑にするLAFS

こんにちは。
理学療法士の中北です。

本日は「筋の滑走を円滑にするLAFS」についてお話いたします。

筋が効率よく収縮運動を行うためには筋が円滑に滑走することが大切ですが、そのために重要な役割を担っている組織の一つがLAFSです。
まずは”LAFS”とは何ぞや?というところから確認していきましょう!

LAFSとは

LAFSとは『lubricant adipofascial system』の略で、潤滑性脂肪筋膜系のことです。

そもそも、皮下や筋骨格間は脂肪組織と線維組織で充填されています。

黄色い粒状の脂肪組織を脂肪小葉といい、その周囲の白い糸状や膜状の線維組織は筋膜と呼ばれており、それらを総称して脂肪筋膜組織といいます。

脂肪小葉と線維組織の説明理学療法ジャーナル 55(4), 377-381, 2021.4より引用

 

脂肪筋膜組織は二層構造となっており、深層部分は前述のLAFSが構成し、浅層部分はPAFS(protective adipofascial system)という防御性脂肪筋膜組織から成ります。

PAFSは脂肪小葉が粒状かつ筋膜が”密”な構造をしており、皮膚直下で外力から深部組織を保護していると考えられていることから「防御性脂肪筋膜組織」と名付けれたわけですね。

一方のLAFSは、脂肪小葉が扁平で筋膜は”疎”な構造をしており、PAFSを介して皮膚に可動性を与え、筋骨格の運動が皮膚に対して円滑に行われるように潤滑剤として作用していると考えられていることから「潤滑性脂肪筋膜組織」と呼ばれており、PAFSとLAFSの間にあるのが浅筋膜です。

LAFSとPAFSの説明理学療法ジャーナル 55(4), 377-381, 2021.4より引用

 

なお、LAFSは皮膚と筋の滑走性を高める役割があるので、荷重に耐えることが求められる手掌・足底・臀部にLAFSは存在していません。

LAFSと筋の滑走性

筋骨格間や深筋膜下の脂肪筋膜組織はLAFSで構成されており、筋肉の収縮運動が円滑に行えるようにし、筋収縮に伴う血管や神経への摩擦を軽減させる潤滑剤として働いています。

そのため、何らかの原因でLAFSに炎症や癒着が生じると、LAFSの潤滑作用が阻害されるため、筋収縮や神経、血管の滑走性が低下して痛みや機能障害につながります。

筋収縮効率を高めるためには、ただ筋肉を鍛えるだけではなく、時にはマッサージなども交えながら、LAFS本来の柔軟性に富んだ状態を保つことも大切だということですね。

また、筋だけではなく神経の滑走性にも関わるLAFS。

LAFSがあることで筋収縮時の神経への摩擦が軽減されるだけではなく、神経自体の滑走性も高まりますので、LAFSの柔軟性は神経症状の緩和にもつながることが考えられます。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。