機能解剖学&運動生理学

骨盤帯の機能解剖2|仙腸関節の安定化機構とは

こんにちは。
理学療法士の中北貴之です。

本日は前回の仙腸関節についての続きをお話していきます。

前回の内容としては、仙腸関節の安定化機構として、「フォームクロージャー」と「フォースクロージャー」がありますよ、というお話をしました。

今回は、フォースクロージャーの具体的な機構や、評価方法などをご紹介していきます。

フォースクロージャーを高めるシステム

フォースクロージャーとは、筋や筋膜によって関節を安定させる機構のことです。

仙腸関節の場合では、4つのシステムがあると言われています。

①後方を斜めに走る系

広背筋→胸腰筋膜→対側の大殿筋

②前方を斜めに走る系

腹斜筋群→前腹部筋膜→対側の内転筋

③深部を縦に走る系

脊柱起立筋→胸腰筋膜深層部→仙結節靱帯→大腿二頭筋

④外側を走る系

中殿筋、小殿筋、対側の内転筋

これらの筋・筋膜システムが協調して仙腸関節を安定させています。

胸腰筋膜とは

体幹部の安定性に大きく関与する組織。

椎骨の棘突起・横突起といった骨や、腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋、大臀筋、広背筋、僧帽筋下部、脊柱起立筋、多裂筋など多くの筋が付着します。

また、固有受容器も多く存在しており、単に筋が付着して力を伝達する媒体としてだけでなく、センサーとしての役割もあると言われています。

以上のように、胸腰筋膜は姿勢や動作時の安定性に大きく寄与しています。

胸腰筋膜の解剖イラストVISIBLE BODYで作成

なかでも、「①後方を斜めに走る系」は歩行においても重要なラインになってきます。

どういうことかと言いますと、

踵接地時の踵→下腿→ハムストリングスと大殿筋→仙結節靱帯→仙骨と対側の仙腸関節→胸腰筋膜→広背筋→僧帽筋下部から上部or上腕三頭筋に分岐→顎関節と頭蓋骨

という力の伝達があると言われていますので、後方斜めを走る系はとても重要です。

仙腸関節の安定化機構の評価法とは

次に、評価方法をご紹介いたします。

  1. 被検者は腹臥位になります。
  2. 検者はハムストリングス、大臀筋、両側の脊柱起立筋を触知します。
  3. 被検者は触知されている側の下肢の、股関節を伸展させます(自動運動)。
  4. 股関節伸展側と対側or同側の、どちらの脊柱起立筋の収縮感が強いのかを評価します。
  5. 股関節伸展側と対側の脊柱起立筋の方が、収縮感が強ければ正常です。

※同側の脊柱起立筋の方が収縮感が強い場合、同側の大殿筋と胸腰筋膜の滑走性低下や、同側の大腿筋膜張筋との滑走性低下の可能性が考えられますので、徒手的なリリースや用具を使ったリリースで滑走性改善を図り、再度評価してみてください。

左右差を体感しやすい評価ですので、左右ともに実施するとクライアントさんにも伝わりやすいかと思います。

また、弛めただけでは元に戻りやすいので、力の伝達が改善した後に「シングルレッグヒップリフト」などで強化するのもおススメです♪

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さらに身体に関する学びを深めたいという方は、『Pilates As Conditioning Academy』もご覧ください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※参考文献
福林徹:腰痛のリハビリテーションとリコンディショニング.文光堂.2011.
齋藤昭彦:腰痛に対するモーターコントロールアプローチ.医学書院.2008.
石井美和子監訳:骨盤帯.医歯薬出版.2013.
岩沼憲治:コアセラピーの理論と実践.講談社.2011.
坂井健雄監訳:グラント解剖学図譜第6版.医学書院.2011.