機能解剖学&運動生理学

膝関節の機能解剖2|内側が変形しやすい理由とは

膝関節

こんにちは。
理学療法士の中北貴之です。

変形性膝関節症の患者数は約3000万人と言われています。

その中でも多数が内側型であると言われています。

なぜ内側型が多いのでしょうか?

不思議ですね。

ということで、今日は膝関節の変形に内側型が多い理由について、機能解剖の観点からお話します。

脛骨関節面の構造上の特徴とは

脛骨の膝関節面は内側と外側で異なります。

脛骨内側関節面の特徴

面積が広く、中央が窪んだソケット状を呈している。

つまり、支持性優位な構造をしている。

 

脛骨外側関節面の特徴

面積が狭く平坦で、後方に向かって傾斜している。

つまり、可動性優位な構造をしている。

脛骨の形状のイラストVISIBLE BODYで作成

そもそも上記のような構造自体の違いがあるんですね。

次は半月板をみてみましょう。

半月板の構造について

半月板も内側と外側では構造が異なります。

内側半月板の特徴

C字状を呈し、辺縁部は関節包や内側側副靱帯と連結し、脛骨に強固に固定されている。

そのため可動性は小さい。

 

外側半月板の特徴

O字状を呈し、辺縁部は関節包や外側側副靭帯とは連結していない。

そのため内側半月板に比べて可動性が大きい。

ついでに半月板の機能についても確認しておきましょう。

半月板の主な機能

①関節の荷重伝達

②関節の適合性を高める

③関節潤滑

④関節軟骨の栄養補給

関節にとって非常に大切な組織ですね。

半月板の除去手術をすると、後々に変形性膝関節症になりやすいと言われる所以です。

なお、半月板は成長に伴って内縁部の血行が乏しくなり、成人では外縁部の10~30%しか血液が供給されていません。

さて、本題に戻ります。

下肢機能軸とは

下肢機能軸も内側型の変形が多い理由に関係しています。

下肢機能軸はミクリッツ線(Mikulicz line)と呼ばれたりもします。

大腿骨頭中心と足関節中央を結ぶ線のことです。

この下肢機能軸は立位時の下肢荷重線に相当し、通常でも若干内側を通過すると言われています。

下肢機能軸のイラストVISIBLE BODYで作成
下肢機能軸が内側を通るイラストVISIBLE BODYで作成

普通に立っていても内側への荷重量が多いということは、それだけ負担もかかりやすいということです。

ちなみに、膝関節の変形が進んでFTAが増大すると、さらに内側への荷重量が増えていきますので、なおさら変形が進行しやすくなっていきます。

FTAとは?

FTA(femoro-tibial-angle)は大腿脛骨角のことです。

大腿骨軸と脛骨軸のなす角度のことで、正常では176°前後とされています。

FTAのイラストVISIBLE BODYで作成

まとめ

変形性膝関節症に内側型が多い理由は、そもそも構造的に内側に荷重しやすいということが考えられます。

具体的には、「脛骨関節面の構造」「半月板の構造と他組織との連結」「下肢機能軸の通過する位置」、これらの要因によって膝関節は内側に荷重しやすくなっています。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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※参考文献
宗田大:膝痛知る診る治す.メジカルビュー社.2007.
園部俊晴:改訂版スポーツ外傷・障害に対する術後のリハビリテーション.運動と医学の出版社.2010.
斉藤秀之:極める変形性膝関節症の理学療法.文光堂.2014.
林典雄:運動療法のための運動器超音波機能解剖 拘縮治療との接点.文光堂.2015.
膝疾患の機能解剖学的病態把握と理学療法.理学療法29(2).2012.
スポーツ選手の半月板損傷-復帰に向けた診療ガイド-臨床スポーツ医学31(12).2014.