神経系と感覚器のしくみ

大脳辺縁系とは|海馬と記憶と空間認知

 こんにちわ

imok株式会社の小林俊夫です

本日は、記憶を司る「海馬」快、不快などの情動に関わる「扁桃体」で有名な「大脳辺縁系」についてお話させて頂きます

大脳辺縁系と原皮質

 

 

大脳辺縁系は、六層構造となる大脳新皮質とは異なり、原皮質により構成されています

原皮質とは何か?というと、両生類の頃から持っていた、系統発生的に古くから存在する神経細胞のこと

大脳や小脳の表面に集まっている神経細胞の集合体である灰白質を「皮質」といい、「大脳皮質」は2~4㎜の厚みがあります。そして、大脳皮質は地層上になっていて、表層から見ていくと、「新皮質」、「古皮質」、「原皮質」といった形になります

大脳新皮質が、ヒトらしい情報処理や思考、判断などを司っているのに対して、原皮質は、快、不快などの情動や本能など、動物にも共通する機能を担っています

記憶に関わる海馬

 大脳辺縁系と言えば、記憶を司る「海馬」と情動に関わる「扁桃体」が有名ですが、先ずは海馬から見ていきましょう

「海馬傍回(かいばぼうかい)」という袋の様なものに包まれて、「海馬」と「歯状回(しじょうかい)」、「海馬支脚(かいばしきゃく)」が存在し、この3つをさして「海馬体」と言います

余談ですが、16世紀にイタリアの解剖学者が、海神ポセイドンが跨る海馬の前脚に形が似ていたことから、命名されたと言われています(タツノオトシゴに似ているからという説もありますが)

また、海馬の断面を見ると、羊の角の様な形をしている為、古代エジプトの神様の名前にちなんで「アンモン角」などとも呼ばれています

そして、海馬はどこに存在するか?というと、側頭葉の内側部に存在します

一般の方でも海馬が記憶に関わるということを、メディアなどを通してご存知の方が多いと思いますが、側頭葉の深部を損傷すると、重度の健忘症などに陥る事から、海馬と記憶の関係が解明されてきました

感覚情報の入力と記憶

 昔は、てんかんの原因が側頭葉にあると考えられていましたが、その際に海馬を含む側頭葉の一部の切除手術を行った所、それを期に、会話などは行えるにも関わらず、新しいことを記憶出来なくなった為、海馬は一時期的な記憶の保管場所だと考えられる様になりました

 また、海馬には外部からの様々な感覚情報が入力されていて、それを整理して数か月間保管していると考えられています

例えば、最も原始的な感覚と言われる嗅覚からの情報は、海馬に直接入力をしている為、街を歩いていて、ふとある香りが香った時に、元カノとの記憶が思い出されるなんてことは、男性あるあるですよね

海馬は一時的な記憶の保管場所であり、記憶を残すべきかどうかの取捨選択を行っている場所でもありますので、強い刺激ほど記憶が残りやすく、嗅覚からの刺激は記憶と結びつきやすいことが考えられます

海馬と空間認知|場所細胞とグリッド細胞

 また、海馬は「空間認知」にも関わることが分かってきており、2014年にノーベル賞を受賞したジョン・オキーフ博士が、海馬のCA1やCA3の領域に、動物が空間内の特定の場所を通過する時だけに活動し、自己の空間位置を特定する「場所細胞」というものを、ラットの研究を通して発見しました

 また、オキーフ博士のお弟子さんである、モーザー博士夫妻が、海馬の1つ手前にあり、海馬に信号を送っている嗅内皮質に「グリッド細胞」という細胞を発見し、「グリッド細胞」は、60度の三角格子の頂点(格子点)で規則的に発火をすることが分かりました

 また、日本の理化学研究所の研究チームは、ラットでの実験を通して、空間の中で自己の場所だけでなく、他者の場所も同時に認識する細胞を発見し、「同時場所細胞」と命名。イスラエルの研究チームはコウモリを使った実験を通して、他者の場所に対応して発火する細胞を発見して、「社会的場所細胞」と提唱。こうした場所細胞や同時場所細胞、社会的場所細胞、グリッド細胞などの働きを通して、空間認識が行われていることが少しずつ明らかになってきています

他にもコウモリを用いた研究では、前海馬支脚には、頭部が水平面の「どの方向を向いているか?」によって反応する「頭部方向細胞」や頭部を垂直方向に動かした時に反応する細胞や体軸を中心に回転させた時だけ反応する細胞が発見をされたり、ラットを用いた研究では、「速度」を感じ取る細胞なども発見されています

 上記の様に、海馬が記憶以外にも空間認知に関する重要な役割を担っていることが考えられますし、移動をしたり、動くという事が海馬の細胞を活性化させることを考えると、運動というのは、ただ筋肉を鍛えるだけではなく、空間の認知能力や記憶力の向上にも重要だと考えられますね

ABOUT ME
Toshio Kobayashi
Toshio Kobayashi
imok株式会社(アイモック)代表取締役/猫背改善専門スタジオ「きゃっとばっく」代表。  トレーナーとして活動をしながら2008年、2009年にアメリカへピラティスの研修を受けに行き、マスタートレーナーの認定を取得。その後、2010年に医療系国家資格を取得。  現在はスタジオの経営、メディアの監修及び出演、全国での研修及び講演、ピラティスリフォーマーの製造及び販売をしながら、姿勢&機能改善、パフォーマンスアップ専門のトレーナーとして、世界中に「I am OK You are OKな人」を増やす為に活動中。