神経系と感覚器のしくみ

バランスとは?

こんにちは。
理学療法士の中北です!

今回は「バランスとは何ぞや?」というテーマでお話させて頂きます。

バランスの定義

そもそも、バランスの定義とは何でしょうか。

Shumway Cook氏は、「バランスとは、身体質量中心の位置を支持基底面内に保持する能力。」と定義しており、バランスと似た言葉である姿勢制御については、「定位と安定性に分けられ、安定性とはバランスと同義語である。」と述べています。

望月氏は、「運動や姿勢の安定性に着目した概念で、支持基底面内に重心線を収めることが要件となり、姿勢調節に関わる運動・感覚神経機能、筋骨格機能、認知機能、呼吸・循環機能など、多くの身体機能の働きにより、結果や現象として観察されるもの。」と述べています。

要するに、バランスとは「支持基底面内に重心を保ちながら、目的とする動作を安定して行えること」といえます。

支持基底面とは
支持基底面の説明イラスト

物体を支えるために、身体や補助具が床などに接している範囲のこと。
支持基底面が広く、重心が低いほど、物体は安定します。

例えば、仰向けに寝ている時は支持基底面(身体と床が接している面)が広く、重心位置は低いので安定性は高い状態。
一方で、片脚立位では支持基底面(片側の足部だけ)は狭く、重心位置も高いので安定性は低い状態ということになります。

 

さて、バランスの良し悪しを考える場合、ただ支持基底面内に重心をとどめておければOKというわけではありません。

空間的・時間的にも適切にバランスを保持し、円滑に動作を遂行出来ているか、という観点も大切です。

バランスの時間的な適切さとは、反応的姿勢制御ともいえます。
例えば、歩行時に誰かにぶつかって姿勢を崩したら、瞬時にバランスをとるための反応が起こらないと転倒してしまいますよね。そうならないためには、素早く正確にバランス反応が生じるという、時間的な適切さも求められます。

他にも、片麻痺の人が立位姿勢において、片手で手すりを力一杯握り締めているとしたら、そこから物を取ったり、歩いたりということは難しいですよね。

このような状態は、”安定している”というより”固定している”という表現の方が近しいので、バランスを適切に保持しているとはいえません。

バランス戦略の多様性

バランスを適切かつ円滑に、というお話をしましたが、そのため大切なのがバランス戦略の多様性。

バランス戦略の説明イラストAndrew L. McDonough. Balance and Postureより引用

 

足関節戦略、股関節戦略、HAT(頭部・上肢・体幹)戦略、ステッピング戦略など、バランスを保持するためには様々な方法があり、これらの何が良い悪いではなく、場面によって使い分けできることが重要です。

立って電車に乗っている時に、電車が揺れた時を思い浮かべて頂くと分かりやすいかと思います。小さな揺れであれば足部でコントロールしますが、大きな揺れになると股関節や体幹、上肢でバランスを取ろうとするかと思います。

それでもバランスを保持できないと、一歩踏み出すステッピング戦略で転ばないようにしますよね。

このように、立位でのバランス保持において、小さな内乱刺激であれば最もエネルギー効率が良いのが足関節戦略です。

ただ、足関節戦略でバランスを保持するには、足部内で十分に重心移動ができることが必須です。そのため、疾患や加齢によって足底感覚が低下していると、足関節戦略を選択することが困難になります。

足関節戦略が困難な場合、次の選択肢になるのが股関節戦略やHAT戦略。

それでもバランスを保持できなければ、ステッピング戦略で支持基底面を広げ、転ばないようにするというのが一般的なバランス戦略になります。

前述のように、これらのバランス戦略を場面に合わせて適切に選択できることが大切です。小さな揺れなのにいきなりステッピング戦略を選択してしまうと、効率的ではないですし、関節への負担も大きくなります。

なお、安静立位姿勢において股関節戦略でバランスを保持している場合、上肢や下肢の挙上動作は難しいので、日常生活動作の幅を狭めることに。

生活期でのリハビリテーションなどを考えると、立位姿勢を股関節戦略や、前述のような固定状態でのバランス保持を改善することができるかは、とても大切ですね。

今回は「バランスとは何ぞや?」というお話をしました。

バランス能力は、リハビリテーション領域であれば日常生活動作能力に、コンディショニング領域であれば障害予防などに、スポーツ領域であればパフォーマンスの良し悪しに関わる、大切な能力の一つですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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