機能解剖学&運動生理学

肩関節の機能解剖6|肩の痛みの発生源

こんにちは。
理学療法士の中北貴之です。

運動指導などで肩に対する介入を行う際の多くは、痛みや違和感の改善を目的にすることが多いのではないでしょうか。

ということで、本日は「肩の痛みの発生源」についてお話いたします。

肩関節周囲の神経支配

肩の痛みを訴える場合、上腕外側や肩の前側などを示すことが多いかと思いますが、その痛みの発生源を推定していくためには、肩関節周囲を支配している神経を理解する必要がありますので、確認していきましょう。

肩周囲の神経支配のイラスト肩関節拘縮の評価と運動療法より引用

このように、肩周囲の組織は複数の神経によって支配されており、筋との関係をまとめると以下の通りです。

  • 肩甲上神経 :棘上筋、棘下筋を支配
  • 腋窩神経  :三角筋、小円筋を支配
  • 肩甲下神経 :肩甲下筋、大円筋を支配
  • 外側胸筋神経:大胸筋、小胸筋を支配

上記の神経は関節包にも分布しており、Azmannらは(1996)前方部は肩甲下神経・腋窩神経・外側胸筋神経が、後方部は肩甲上神経・腋窩神経が支配していると報告しています。

なお、炎症が起きやすい部位の一つである肩峰下滑液包(腱板の滑動性を円滑にする肩峰下にある滑液包)は肩甲上神経が主に支配していますが、最近では腋窩神経も関与しているとの報告があります。

また、腋窩神経は「上腕骨・上腕三頭筋長頭・大円筋・小円筋」によって構成されるQuadlilateral Space(QLS:四辺形間隙)を走行しているため、ここで圧迫刺激を受けることもあるため、腋窩神経支配領域である上腕外側部(三角筋の辺り)に痛みの訴えが多いことが考えられますね。

QLSのイラスト肩関節拘縮の評価と運動療法を参考に作図

夜間痛

肩関節疾患の訴えで多いのが夜間痛。

夜間痛があると睡眠の質が低下して交感神経優位な状態になりやすくなるので、少しでも早く痛みを緩和するためには何とかしたい問題ですよね。

夜間痛の原因はまだ完全に解明はされていませんが、肩峰下圧の上昇が指摘されています。

烏口肩峰アーチのイラスト臨床スポーツ医学 30:43,2013.を参考に作図

肩峰下圧とは、肩峰・烏口突起・烏口肩峰靭帯によって構成される烏口肩峰アーチ直下部分の圧のことで、肩峰下圧上昇の原因としては、炎症期であれば肩峰下滑液包や腱板の炎症に伴う腫脹、拘縮期であれば肩峰下滑液包と腱板の癒着瘢痕化などが挙げられます。

つまり、肩峰下周囲の肩関節上方組織の容積が増大することで肩峰下圧が上昇し、夜間痛につながるということですね。

夜に痛みが出る理由としては、就寝時の肩のポジションが考えられます。

仰臥位で寝ると体幹の厚みによって肩関節は伸展位になり、肩関節上方組織の緊張が高まりますし、患側を下にした横臥位でも患部が圧迫されて痛みが生じることに。

そのため、仰臥位の時は肘にクッションや枕を置いたり、横臥位になるなら患側を上にして枕などを抱きかかえるようにすると、肩関節上方組織の緊張を和らげることができてオススメです!

結帯動作の痛み

肩関節疾患では、日常生活で挙上動作は大丈夫になったけど結帯動作が・・・というケースも多いのではないでしょうか?

結帯動作は肩甲上腕関節の「伸展・内旋・外転運動」の組み合わせの動きですが、なかでも求心位を保った状態で伸展が出来なくなるケースが多く、その主要な制限因子となるのが、伸展動作で伸張される上後方関節包です。

そのため、結帯動作改善のためには後方関節包の伸張性がポイントになりますが、後方関節包への介入をする際に気をつけたいのが、棘上筋・棘下筋の筋緊張のコントロールです。

前述のとおり、棘上筋と棘下筋は肩甲上神経支配となりますが、上後方関節包も肩甲上神経により支配されいるため、上後方関節包への刺激が筋緊張を亢進させる可能性があるので、関節包へのアプローチ後に筋緊張が高くなっていないかを確認することが大事です。

本日は、肩の痛みについてお話いたしました。
肩に限らずですが、問診によって痛みの部位を確認し、どこの支配神経領域なのかを踏まえて介入することが大切ですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

さらに身体に関する学びを深めたいという方は、『Pilates As Conditioning Academy』もご覧ください。
https://pilates-as-conditioning.com/