機能解剖学&運動生理学

頚椎の機能解剖2|頚椎の筋

こんにちは。
理学療法士の中北貴之です。

本日は、頚椎に付着する筋についてのお話です。

頚椎は脊柱の中で最も可動性があるだけなく、頭部支持の役割も担っていることから、非常に多くの筋が付着していますので、前面と後面に分けて整理していきましょう。

頚椎の前面にある筋

頚椎前面の筋のイラストグラント解剖学図譜より引用

まずは、頚椎の前面にある筋の起始停止です。

筋名 起始 停止
斜角筋群 前斜角筋 C3~6の横突起 第1肋骨
中斜角筋 C2~7の横突起 第1肋骨
後斜角筋 C4~6の横突起 第2肋骨
椎前筋群 頚長筋 垂直筋:C5~T3の椎体
上斜筋:C3~5の横突起
下斜筋:T1~3の椎体
C2~4の椎体
C1の前結節
C6・7の横突起
頭長筋 C3~6の横突起 後頭骨の底部
前頭直筋 C1の横突起 後頭骨の底部
外側頭直筋 C1の横突起 後頭骨頚静脈突起

このように、斜角筋群と椎前筋群が頚椎の前面にはあります。
なお、この他にも広頚筋や胸鎖乳突筋、舌骨筋群が頚部の前面にはありますが、頚椎に起始停止が無いので、今回は省略いたします。

斜角筋といえば、胸郭出口症候群における絞扼部位の一つとして有名ですね。

腕神経叢が頚部から上肢に至る通り道の、最初のトンネルが斜角筋間隙で、「前斜角筋・中斜角筋・第1肋骨」で三角形のトンネルを形成しています。

斜角筋間隙のイラストVISIBLE BODYで作成

前斜角筋と中斜角筋はともに第1肋骨に停止しており、第1肋骨を吊り上げるような役割を担っていますので、肋骨が下制した「なで肩」のような姿勢になると、緊張が亢進しますし、斜角筋間隙の三角形も狭くなるので、腕神経叢の絞扼につながります。

そして、椎前筋は頚椎屈曲筋群として頚椎の安定性に寄与していますが、パソコン作業やスマホの利用などが増え、フォワードヘッド姿勢の時間が続くと、拮抗筋である頚椎伸展筋群が過活動になりますので、椎前筋の筋力低下につながる可能性が考えられます。

そのため、アゴが上がった不良姿勢の改善には、この椎前筋のエクササイズも大切ですね。

頚椎の後面にある筋

頚椎後面の表層筋のイラストグラント解剖学図譜より引用
頚椎後面の深層筋のイラストグラント解剖学図譜より引用

続いては、頚椎の後面にある筋を確認していきましょう。

筋名 起始 停止
僧帽筋上部線維 後頭骨の上項線、外後頭隆起、項靭帯 鎖骨外側1/3、肩峰、肩甲棘
菱形筋 C6~T4の棘突起、項靭帯、棘間靭帯 肩甲骨内側縁の下部2/3
肩甲挙筋 C1~C4の横突起 肩甲骨内側縁の上部1/3
上後鋸筋 C6~T2の棘突起と項靭帯 第2~5肋骨
頭板状筋 C4~T3の棘突起 後頭骨上項線外側、乳様突起、C1・2の横突起
頚板状筋 T3~6の棘突起
頚腸肋筋 第1~6肋骨 C4~6の横突起
頭最長筋
頚最長筋
C3~T3の横突起
T4・5の横突起
乳様突起
C2~6の横突起
頭棘筋
頚棘筋
C5~T3の棘突起
C6~T2の棘突起
後頭骨
C2棘突起
頭半棘筋
頚半棘筋
C3~6の横突起
T1~6の横突起
後頭骨の上項線と下項線の間
C2~7の棘突起
多裂筋 C4~7の下関節突起 2~4椎体上位の棘突起
回旋筋 C2~6の横突起 1~2椎体上位の棘突起
大後頭直筋 C2の棘突起 後頭骨下項線の中央1/3
小後頭直筋 C1の後結節 後頭骨下項線の内側1/3
上頭斜筋 C2の横突起 後頭骨の下項線
下頭斜筋 C2の棘突起 C1の横突起

前面に比べ、沢山ありますね!

正常な立位や座位姿勢でも、頭部の重心は支点となる環椎後頭関節よりも前方に位置していますので、常に前に転がる力が働いています。それを支えているのが頚部の伸筋群ですので、このように頚椎後面には筋が多いのかもしれませんね。

頚部後面の筋には、頭位を一定に保つ後頭下筋群(大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋)と、頚椎の動きに関与するその他の筋群に大別されます。

後者の表層筋群としては、僧帽筋上部線維・菱形筋・肩甲挙筋・頭板状筋・頚板状筋があり、深層筋群には、腸肋筋・最長筋・棘筋・多裂筋・回旋筋があります。

なかでも頚半棘筋は頚椎前弯保持に重要で、上位頚椎のDaynamic Stabilizerとして働いており、下位腰椎における多裂筋的な存在だといわれています。

これら深層筋群へのエクササイズは、頚椎のアライメント(前弯)が整っている状態で行うことが重要です。

アライメント不良の状態では関節軸がズレている状態なので、深層筋群は適切に働かない為ですね。

そこで私がよく使うのが、猫背&ストレートネック改善ツール『Re-arch spine』という道具を用いたエクササイズです。

お客様のセルフコンディショニングとしても使える点が良いですね。

本日は頚部の筋についてお話いたしました。抗重力位において頭部は常に前方に転がる力が働いていますので、頚部後面の伸展筋群が過剰に働かなくて良いように、姿勢を整えることは大切ですね。

さらに身体に関する学びを深めたいという方は、『Pilates As Conditioning Academy』もご覧ください。
https://pilates-as-conditioning.com/

最後までお読みいただき、ありがとうございました。