機能解剖学&運動生理学

足関節・足部の機能解剖2|足部のアーチとは

足部アーチ

こんにちは。
理学療法士の中北貴之です。

本日は足部アーチについてお話いたします。

 ヒトの最大の特徴が直立二足歩行ですが、それを可能にしている要因の一つが足部アーチの存在です。

歴史の授業でお馴染みのアウストラロピテクスには足部アーチがあったと言われています。

足部アーチの存在により、少ないエネルギーで遠くまで移動することができ、生存に役立ったとされています。

・・・いつの間にやら歴史の話で終わりそうな勢いになってきましたね。

そろそろ本筋に戻って足部アーチの構成から確認していきましょう!

足部アーチの構成

 足部には内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つのアーチがあります。

足部アーチのイラスト足部のアーチ  VISIBLE BODYで作成

それぞれ、静的支持組織(骨・靱帯・関節包など)と動的支持組織(筋)によって形成されています。

足部アーチが柔軟にたわむことで荷重時の衝撃を吸収し、反対に足部アーチが緊張することて足部の剛性を高めて推進力を高めることができます。

内側縦アーチ

内側縦アーチのイラスト内側縦アーチ VISIBLE BODYで作成

足部の内側縦アーチを構成している「骨」「靱帯」「筋」は以下の通りです。


踵骨、距骨、舟状骨、内側楔状骨、第1中足骨

靱帯など
バネ靱帯(底側踵舟靱帯)、距踵靱帯、楔舟靱帯、足根中足靱帯、長短の足底靱帯、足底腱膜


前脛骨筋、後脛骨筋、長腓骨筋、長母趾屈筋、短母趾屈筋、長趾屈筋、母趾外転筋、足底方形筋

内側縦アーチも外側縦アーチも低下した状態を扁平足と呼びますが、扁平足症例の約80%に後脛骨筋の機能不全がみられるという報告もあり、後脛骨筋は内側縦アーチの保持において重要な役割を担っています。

そして、後脛骨筋と協調して働く重要な筋が長腓骨筋です。
後脛骨筋と長腓骨筋の協調作用を「クロスサポートメカニズム」とも言います。

クロスサポートメカニズムとは

クロスサポートメカニズムとは、後脛骨筋と長腓骨筋による足部安定化メカニズムのことです。

後脛骨筋は足部の内側から足底へ、長腓骨筋は足部の外側から足底へと、それぞれが足底部で交差(クロス)する走行をしており、距腿関節底屈時における回内・回外の制御、後足部の安定、アーチの引き上げに寄与します。

クロスサポートメカニズムのイラストクロスサポートメカニズム VISIBLE BODYで作成

扁平足症例の歩行では、立脚後期に後脛骨筋の活動が増加し、長腓骨筋の筋活動が低下しているとの報告もあります。
つまり、後脛骨筋は機能不全なのに頑張っている状態ということです。

そのため、内側縦アーチの低下だからといって、内側の後脛骨筋ばかりをトレーニングするのではなく、外側の長腓骨筋も合わせてトレーニングすることが大切ですね。

また、静的支持組織においては、特に足底腱膜がアーチ保持への関与が大きいとされています。

上記のように、内側縦アーチの低下が問題視されることが多いですが、内側縦アーチや外側縦アーチが過剰に上昇した「ハイアーチ」の状態も、荷重時の衝撃吸収機能が発揮されない為、足底腱膜炎などの障害につながりますので、適切な筋の柔軟性も必要です。

外側縦アーチ

外側縦アーチのイラスト外側縦アーチ VISIBLE BODYで作成

足部の外側縦アーチを構成している「骨」「靱帯」「筋」は以下の通りです。


踵骨、立方骨、第5中足骨

靱帯
長短の足底靱帯、踵立方靱帯、足根中足靱帯


長腓骨筋、短腓骨筋、短趾屈筋、小趾外転筋、短小趾屈筋、小趾対立筋

外側縦アーチの低下もハイアーチの原因となります。

外側縦アーチの要石となるのが立方骨ですが、距骨下関節が回外すると踵立方関節も回外するため、立方骨は降下する方向に負荷が掛かりますので、その状態が長期間に渡って続くと、外側縦アーチの低下へとつながります。

横アーチ

横アーチは後足部レベル、楔状骨レベル、中足骨レベルに分類されますので、それぞれに分けて記載します。

横アーチのイラスト横アーチ VISIBLE BODYで作成

 

【中足骨レベル】
 骨:第1~5の中足骨頭

 靱帯:深横中足靱帯
 筋:母趾内転筋横頭

【楔状骨レベル】
 骨:3つの楔状骨、立方骨

 靱帯:楔間靱帯、楔立方靱帯
 筋:長腓骨筋

【後足部レベル】
 :舟状骨、立方骨、踵骨

 靱帯:舟立方靱帯
 筋:後脛骨筋

横アーチ低下の原因としては、後述するウィンドラス機構の破綻や、外側縦アーチの低下が考えられます。

ウィンドラス機構が破綻すると、前足部の安定性が低下するため中足骨が内転し、いわゆる開長足につながります。

また、外側縦アーチが低下すると、立方骨の降下に伴い楔舟関節が不安定になるため、横アーチが低下します。

足部アーチを支える構造的・機能的な仕組み

足部アーチには、衝撃吸収足部の剛性向上という重要な機能がありますが、これらを補助するために「トラス構造」と「ウィンドラス機構」という仕組みが備わっています。

トラス構造とは、足部荷重時に足底腱膜が伸長されてアーチが沈み込み、負荷を分散させる仕組みです。

足部アーチは下図のような三角構造をしており、上端が骨構造で硬く、底辺が足底腱膜で柔軟な造りになっています。

足部のトラス構造のイラストトラス構造 VISIBLE BODYで作成

 

そして、ウィンドラス機構とは、足部の剛性を高める仕組みのことです。

歩行において踵離地から足趾離地にかけてMP関節が背屈していくと、足底腱膜の緊張が増加して足部のアーチが高くなります。すると足部の剛性が高まって推進力も増加します。この機構をウィンドラス機構と言います。

ウインドラス機構のイラストウィンドラス機構 VISIBLE BODYで作成

母趾伸展テスト

ウィンドラス機構が機能しているかのテストに「母趾伸展テスト」というものがあります。

安静立位で母趾を他動的に背屈させ、内側縦アーチの反応をチェックします。
⇒挙上する=intact
⇒遅延して挙上=limited
⇒挙上しない=absent

「limited」or「absent」だとウィンドラス機構の機能低下が疑われます。
また、後述のFPIの結果において、回内足の割合が高くなるとされています。

足部アーチの評価

足部アーチの評価は大別して、X線による画像評価、荷重位での評価、非荷重位での評価に分かれます。

具体的な評価方法は多くありますが、定量的に評価できる方法としてFoot Posture Index(FPI)があります。

6項目を5段階で評価し、-12から+12までにスコア化するものです。

FPIの評価項目

①距骨頭の触診
②外果上下の曲線カーブ
③踵骨の前額面上の位置
④距舟関節部の隆起
⑤内側縦アーチの形態・適合性
⑥後足部に対する前足部の内外転

それぞれ -2、-1、0、+1、+2 の5段階で点数化していく。

評価にはFPIのような数値化できる定量的評価と、数値化できない定性的評価があります。

どちらも大切ですが、定量的評価も行うことでお客様にビフォーアフターが伝わりやすいのでおすすめです!

足部アーチ改善のエクササイズとは

それでは最後に、足部アーチの保持におすすめのエクササイズをいくつかご紹介いたします。

片脚立ち

最もシンプルですが、片脚立ちになるだけで足部内在筋である、足底方形筋・短母趾屈筋・母趾外転筋は、両脚立ちに比べて筋活動が増加します。片脚への負荷が増加するので当然といえば当然ですが(笑)

中枢系の疾患が無ければとても簡単に行えますが、一つ気をつけたいのが「踵骨の荷重バランス」です。踵骨の真ん中に荷重出来ていないと、アライメントが崩れた状態で筋活動を促すことになる為、逆効果になる恐れもあります。

踵骨の荷重が感じにくいという方は、何か薄い物を踵骨の真ん中に当てた状態で行うと分かりやすいかと思います。

20秒~30秒行いましょう。

母趾と四趾のチョキ運動

これもとてもシンプルですが、慣れないと足がツリそうになる方続出のエクササイズです。

母趾とその他の四趾でチョキを繰り返す運動ですが、ポイントは足趾伸展位でMP関節を動かすことです。そうすることで足部内在筋を活性化することができます。

10回~20回繰り返しましょう。

本日は足部のアーチについてお話をしました。足部アーチは直立二足歩行を可能にしている、とても大切な部分ですね!

さらに身体に関する学びを深めたいという方は、『Pilates As Conditioning Academy』もご覧ください。
https://pilates-as-conditioning.com/

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※参考文献
坂井健雄監訳:グラント解剖学図譜第6版.医学書院.2011.
入谷誠:入谷式足底板.運動と医学の出版社.2011.
片寄正樹:足部・足関節理学療法マネジメント.メジカルビュー社.2018.
足関節・足部疾患の機能解剖学的病態把握と理学療法.理学療法31(2).2014.
足部・足関節のバイオメカニクス.関節外科34(1).2015.