こんにちは。
分子栄養学認定カウンセラーの千野ひとみです。
今日は、糖質制限ダイエットについて考えていきましょう。
「糖質制限」は、糖尿病の食事指導の選択肢のひとつとして考えられていたり、大手のダイエットジムで取り入れていること等から、一般の方々にも広まっている食事法ですね。
ですが、一般の方々が「炭水化物は悪」のように考え、主食となるご飯を一切食べなかったり、自分の栄養状態が良く無いにも関わらず極端なダイエットを行うことで
一旦は体重が減少したもののリバウンドしてしまったり、ダイエットどころか体調が悪くなったりといったことが起こっています。
糖は、大切なエネルギー源
糖は、私たちが生きていく上でエネルギー源となる、とても重要な物質です。
炭水化物などから摂取した糖質は、ブドウ糖に分解され、吸収されて血液に入ります(この血液中のブドウ糖のことを血糖値といいます)。
空腹時の血糖値は、約70~110mg/dlが正常値といわれており、高過ぎたり低過ぎたりしないよう、ホルモンによってコントロールされています。
世界的な糖尿病の増加により、血糖値が高いことが問題視されることが多いですが、低すぎることで体調不良を訴える方も多いんです。
ブドウ糖が血中に入ると、膵臓からインスリンが分泌され、細胞内に取り込まれてエネルギーとして使えるようになります。
余った糖は、将来のために肝臓に蓄積され、血糖値は一定の数値を維持します。
食事からの糖が無くなったら?
血糖値は、ある程度一定の値を保つことが重要だとお伝えしました。
糖質制限をするということは、食事から摂取できる糖質を無くす、もしくは少なくするということですね。
すると、糖質から得られるエネルギーが減るわけですから、他のものから糖をつくり出さなければなりません。
炭水化物を摂ることで、一時的に血糖値は上昇し、その後下降します。
食事からのブドウ糖で血糖値が維持できるのは約2時間です。
そのため、食後2時間後には血糖値が下がってしまうため、体内では、グルコースとして蓄えられている肝臓から、グルコースをブドウ糖に変換します。
肝臓にグルコースが十分蓄えられていれば、約12時間、血糖値が維持できます。
さらに、アミノ酸や脂質から糖をつくり出す「糖新生」も行って、血糖値を維持しようとします。
このように、食事をしていない時にはグルコースを糖に変換したり、糖新生を行って血糖値を維持しなければなりませんが、これらの機能が低下している人がいるんです。
そんな人が糖質制限をしてしまったら、血糖値が下がり、様々な体調不良を引き起こしてしまいます。
糖質制限してはいけない人
肝硬変など、肝臓の機能が低下している人
肝細胞が壊れ、肝臓の働きが低下していては、肝臓に貯蔵されているグルコースを使うことができません。さらに、そもそも肝臓が機能低下している状態では、グルコースが貯蔵できる量も減ってしまいます。
副腎疲労の人
糖新生を行うには、副腎から分泌されるコルチゾールや膵臓からのグルカゴンが必要ですが、副腎が疲弊している副腎疲労の人はコルチゾールの分泌が低下しているため、糖新生ができません。
糖新生能力の低い人
アミノ酸をブドウ糖に変換するには、「グルコース・アラニン回路」で、アラニンとピルビン酸の変換がうまく行われなければなりません。
そのためには、アラニンアミノトランスフェラーゼという酵素の働きが重要で、この酵素が活性化するためにはビタミンB₆が欠かせません。血液検査のALTやASTという項目が低い場合には、糖質制限はやめた方が良いかもしれません。
脂肪酸の代謝が出来ない人
長鎖脂肪酸代謝異常症という疾患がありますが、脂肪をエネルギーに変えられない人は、糖が不足した場合、エネルギー不足に陥ります。
この疾患でない場合でも、例えばカルニチンが不足している場合は、脂肪をエネルギーに変えることができません。
私たちが、心臓を動かしたり血液を全身に供給したり、もちろん歩いたり生活する上で、エネルギーは欠かせません。
このエネルギーの供給源である食事からの糖質を減らした場合、他のものから糖をつくらなければなりません。
もしその機能が低下している人が糖質を摂取しなかったとしたら、身体はエネルギー切れとなってしまいます。
特に現代では、偏った食品ばかりを食べていたり、栄養が不足しているレトルト食品、ミネラルの吸収を阻害してしまうことの多い添加物を多く摂取していたり
栄養が足りていない人がとても多いです。
そのため、糖質制限ダイエットに失敗したり、具合が悪くなってしまう方がとても多いんです。
安易に流行りのダイエット法を試すのではなく、まずは、自分の普段の食事を振り返ることが大切ですね。