機能解剖学&運動生理学

筋の運動生理学4|骨格筋線維の種類とは

こんにちは。
理学療法士の中北です。

本日は「骨格筋線維の種類」についてお話いたします。

筋線維については、本によって速筋やら、FGやら、typeⅡやら、白筋やらと、概ね同じ筋線維のことを指しているのに、記載方法が異なる場合があって紛らわしいと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ということで、本日はそれらを整理してお伝えいたします。

筋線維分類の歴史

人体解剖の歴史は古く、1304年には初めて公開解剖が行われ、その頃から医学にとって必要な教育として認識されていたそうです。そして、1543年にはかの有名なヴェサリウスによって世界初の医学書が刊行されています。

昔は現代のような研究設備や知識がなかったため、骨格筋線維は”見た目の違い”によって分類されていました。

いわゆる「赤筋」と「白筋」です。

赤く見える筋線維は赤筋、白く見える筋線維は白筋として分類されました。

この色の違いは、ミオグロビンという、筋細胞内で酸素を運搬する役割を担うタンパク質の色に由来します。

ミオグロビンは、ヘモグロビンが運んできた酸素を受け取り、筋肉の中に運び込む役割を持ちます

それから時が経ち、1800年代後半には収縮特性による違いがあることが発見されました。

遅筋と速筋とは

これが、「遅筋」と「速筋」です。

それぞれは赤筋と白筋とも対応しており、赤筋は収縮速度が遅いため遅筋とも呼ばれ、白筋は収縮速度が速いため速筋とも呼ばれるようになりました。

なお、遅筋と速筋の違いは、筋を支配している運動神経によるところが大きいと言われています。

速筋線維の多い前脛骨筋と、遅筋線維の多いヒラメ筋の支配神経を交差して移植すると、速筋線維が多い前脛骨筋の収縮速度は遅くなり、遅筋線維の多いヒラメ筋の収縮速度は速くなるという報告もあります。

さらに時は流れ、1960年代からは筋線維を組織化学的に分類する研究も行われるようになりました。

筋線維のtypeによる分類とは

これが、「typeⅠ」や「typeⅡ」です。

ATPaseのある部分を染色する前に、アルカリ性もしくは酸性の溶液につけると違いが生じることが発見され、typeⅠ・typeⅡa・typeⅡb・typeⅡcに分類され、その後typeⅠは遅筋線維に相当し、typeⅡ線維は速筋線維に相当することも確認されました。

そして、1970年代には収縮能力や代謝特性による分類も行われるようになりました。

これが、「SO」「FG」「FOG」です。

※SO=slow-twitch oxidative

※FG=fast-twitch glycolytic

※FOG=fast-twitch oxidative glycolytic

上記3種類の収縮能力や代謝特性による分類は、概ねSOはtypeⅠ、FOGはtypeⅡa、FGはtypeⅡbに相当します。

なお、一般人のtypeⅡaとtypeⅡbの比率は1:1~1:2と言われていますが、パワー系のトップアスリートではほとんどがtypeⅡaとなっているとも言われています。

まとめ

このように、筋線維研究の歴史に伴い、筋線維は様々な呼び方をされることになりました。それぞれの呼び名と特徴をまとめると、下記の表の通りとなります。

赤筋/遅筋/SO/typeⅠ 白筋/速筋/FG/typeⅡb ピンク筋/中間筋FOG/typeⅡa
ミトコンドリア量 多い 少ない 比較的多い
ミオグロビン量 多い 少ない 比較的多い
グリコーゲン量 少ない 多い 中間
解糖系酵素活性 低い 高い 中間
ATP供給機構 電子伝達系 解糖系 電子伝達系
疲労 遅い 速い 中間
単収縮の速度 遅い 速い 比較的速い
筋線維の太さ 細い 太い 中間

※ATP供給機構とは:グルコース(糖質)は解糖系(酸素を必要とせず、グルコースからピルビン酸と乳酸を生成する過程で、2個のATPを産生する)、TCA回路(酸素を必要とし、ピルビン酸を基にして電子伝達系に必要なNADH2やFADH2を生成する)、電子伝達系(NADH2やFADH2がミトコンドリア内で酸化される過程で、36個のATPを産生する)の順番で代謝されてATPを産生します。

ミトコンドリアの機能を表したイラスト

本日は、筋線維の種類についてお話いたしました。

それぞれの分類や呼び方を、個別で覚えようとすると難しいですが、研究の歴史から紐解くと頭に残りやすいですね!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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※参考書籍など
小澤靜司:標準生理学.医学書院.2014.
中村隆一:基礎運動学.医歯薬出版.2000.
佐伯由香訳:トートラ人体解剖生理学.丸善.2007.