こんにちは。
imok株式会社で活動している、理学療法士の中北貴之です。
今回は「痛みの伝達路」についてのお話です。
痛みを感知する受容器
痛みの伝達路の説明に入る前に、末梢神経線維の分類について簡単に確認しておきましょう。
末梢神経線維は髄鞘の有無によって有髄線維と無髄線維に分かれ、直径の大きいものからAα線維・Aβ線維・Aγ線維・Aδ線維・B線維に分かれており、無髄線維には直径の小さなC線維のみがあります。
直径が大きいほど神経の伝達速度が速くなるため、無髄線維よりも有髄線維の方が伝達速度は速くなります。
それでは、痛みに話を戻しましょう。
痛みは、末梢組織に加わった侵害刺激が脊髄に伝わり、脊髄から大脳皮質へと伝達されます。
痛みを感知する受容器には、「温度侵害受容器」「高閾値機械受容器(機械侵害受容器)」「ポリモーダル受容器」「サイレント受容器」がありますが、温度侵害受容器は温熱や冷刺激の受容器、サイレント受容器は内臓に存在する受容器であるため、ここでは高閾値受容器とポリモーダル受容器についてお話します。
一次侵害受容ニューロンの末端を自由神経終末といい、ここに高閾値機械受容器とポリモーダル受容器が存在します。
高閾値機械受容器は侵害性の機械的刺激によって興奮し、Aδ線維によって侵害刺激情報を脊髄に伝えて一次痛(チクッとするような鋭い痛み)に関与し、ポリモーダル受容器は機械的刺激だけではなく、化学的刺激や熱刺激にも反応するほか非侵害刺激にも反応し、主にC線維によって様々な刺激情報を脊髄に伝えて、二次痛(ズゥーンとするような鈍い痛み)に関与しています。
このように、末梢組織に存在する受容器によって痛みは感知され、末梢神経線維によって脊髄へと伝達されるわけですね。
脊髄の侵害受容ニューロン
末梢組織で感知された痛み情報は脊髄後角に伝達されますが、Aδ線維(一次痛)とC線維(二次痛)は投射される部位が異なります。
Aδ線維は脊髄後角のⅠ層・Ⅱ層・Ⅴ層に入り、特異的侵害受容ニューロン(NSニューロン)とシナプスを形成し、C線維は脊髄後角のⅠ層・Ⅱ層・Ⅳ層・Ⅴ層・Ⅵ層に入り、NSニューロンに加えて広作動域ニューロン(WDRニューロン)ともシナプスを形成。
NSニューロンは侵害性の機械的刺激に興奮しますが、弱い機械的刺激では興奮しません。
一方で、WDRニューロンは侵害刺激だけではなく非侵害刺激にも興奮するという特徴があり、WDRニューロンは繰り返し刺激により感受性が増すワインドアップに関わるほか、痛み刺激以外でも痛みとして伝達するようになってしまうアロディニアにも関わっています。
このように、末梢組織で感知された痛みは、脊髄後角でNSニューロンとWDRニューロンに伝達され、そこから脳へと上行します。
痛みの上行路
痛みの主要な上行路としては、「脊髄視床路」と「脊髄網様体路」があります。
脊髄視床路は『脊髄→視床→体性感覚野』を上行する経路で急性痛に関与し、脊髄網様体路は『脊髄→脳幹網様体→視床』まで上行すると、島皮質・前帯状回・偏桃体・海馬といった辺縁系や前頭前野にも伝達され、痛みの情動的側面や認知的側面をもたらし、慢性痛に関与しています。
最後は「下行性疼痛抑制系」についても確認しておきましょう。
下行性疼痛抑制系とは、脳幹から脊髄に下行する抑制性ニューロンによって、痛みの情報伝達をブロックする疼痛抑制システムで、中脳にある中脳中心灰白質という部位からスタートし、セロトニンやノルアドレナリンを分泌して脊髄後角に働きかけ、脊髄での痛み刺激の伝達を抑制します。
スポーツ選手などが、試合中にケガをしても「アドレナリンが出ていて痛みを感じなかったけど、試合が終わったら痛くてビックリした」というのは、この経路が働いていることが考えられますね。
また、抗うつ薬が鎮痛薬として使われることがありますが、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、痛みを和らげる薬理効果を狙っています。
日頃から、適度な運動と質の良い栄養摂取を心がけ、適切にセロトニンやノルアドレナリンを分泌して、快適な毎日を過ごしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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