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腸内細菌叢

こんにちは。
分子栄養学認定カウンセラーの千野ひとみです。

今日は、腸内環境について考えていきましょう。

私たちの腸内(特に大腸)には、多種多様な腸内細菌が生息しており、お互いにバランスをとりながら腸内環境を保っています。顕微鏡で見ると、まるでお花畑(フローラ)のように見えることから、腸内フローラ、または腸内細菌叢と呼ばれています。
腸内細菌叢は、健康に関わる様々な役割を担っており、それには腸内細菌の多様性が関係しています。

今日は、この腸内細菌叢について考えていきましょう。

腸内細菌叢のバランスを崩すもの

腸内細菌には、善玉菌や悪玉菌、日和見菌といった分類があり、さらに細かくわけられ、実に1,000種類100兆個もが存在するといわれています。
善いや悪いといった言葉が使われていますが、これらは共生することが大切であり、それぞれのバランスが重要です。このバランスが崩れることにより、便秘や下痢といったお腹の不調だけに留まらず、様々な疾患の要因ともなり得ることがわかってきています。

腸内細菌叢のバランスを崩すもの

・食習慣(高脂肪食や人工甘味料など)
・薬剤(抗生物質や抗菌薬、プロトンポンプ阻害薬)
・加齢
・妊娠や出生時の母子環境、幼少期のストレス

食習慣

日々の食生活は、腸内細菌叢に大きく影響を及ぼします。

高脂肪食が腸内環境を変化させるということは、多くの研究で明らかになっています。
こちらの研究は、高脂肪・高糖食の食事を与えたマウスに対して、遺伝的背景に関係なく腸内細菌叢が変化しており、その日数は平均3.5日であったとのことです。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25532804/

さらに、健康な男女217人に対してのランダム化比較試験では、高脂肪食がヒトの腸内細菌叢を変えるという研究結果が出ています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30782617/

また、アルコールの過剰摂取はヘリコバクターピロリによる胃がん誘発やリーキーガットシンドロームを引き起こすのではと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29195678/

そして、民族や地域、国によって、形成される腸内細菌叢には特徴があります。

日本人の腸内細菌叢には善玉菌が多くみられ、酪酸を生成する遺伝子を多くもっています。
甘酒や味噌、塩麴といった発酵食品は腸内細菌の餌となり、漬物や納豆、醤油には腸管免疫に影響する様々な乳酸菌が含まれ、腸内細菌叢との関わりが明らかになりつつあります。

薬剤や食品添加物

胃酸分泌を抑制させるプロトンポンプ阻害薬の使用がヒト糞便細菌叢に影響することが報告されており、抗菌薬やヒスタミンH₂受容体拮抗薬は肥満と関連します。
さらに、人工甘味料や食品添加物が腸内細菌叢へ影響を及ぼすことも議論されています。

加齢

善玉菌や悪玉菌、日和見菌のバランスは、年齢によって変化します。
人間は、母親のお腹の中にいる時には無菌状態であり、生まれてから3~4時間後の腸内には大腸菌などがあらわれはじめます。そして24時間後には便1gあたり1億個以上にも達するように、外部の正解と接触する過程で、数多くの菌と共存していきます。

そして、善玉菌であるビフィズス菌は赤ちゃんの時に最も多く、中年期から老年期にかけて減少します。一方で大腸菌などの悪玉菌は出生直後に最も多く繁殖しますがすぐに減少し、中年期以降に再び増えていきます。

出典:人の健康は腸内細菌で決まる!/光岡知足著

 

妊娠や出生時の母子環境、幼少期のストレス

妊娠中の母親の状況が腸内細菌叢に影響を及ぼすことも判明してきています。

妊娠期の母体ストレス、母親の肥満や飢餓、食生活、妊娠期感染症、出産様式(経膣分娩か帝王切開か)、授乳様式(母乳かミルクか)、出生直後の衛生環境、出生前後に投与された薬剤など

実に様々な要因が関与して、私たちの腸内細菌叢は形成されていきます。



腸内細菌叢と疾患

様々な疾患と腸内細菌叢との関わりが研究されています。

・炎症性疾患・免疫関連疾患
炎症性腸疾患、アレルギー疾患、関節リウマチなど
・代謝性疾患
糖尿病、肥満症、脂肪肝、脂肪肝炎
・がん・腫瘍免疫
食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん
・精神、神経系疾患
うつ病、多発性硬化症、パーキンソン病、自閉症関連疾患など

 

腸内環境バランスを整える食事法として、食物繊維摂取の推奨、プロバイオティックスやプレバイオティックス、さらに最近では便移植までも広まってきています。
腸内環境バランスは、すぐに大きな変化をうむことは難しいようですが、それでも日々の食生活を少しずつ改善させることで、疾患のリスクを減らすことにつながるのではないでしょうか。