こんにちは。
理学療法士の中北貴之です。
本日は肩甲上腕関節についてお話していきます。
肩甲上腕関節の構造とは
肩甲上腕関節は、浅い関節窩に大きな上腕骨頭が適合しているような構造をしており、関節窩は上腕骨頭の1/3程度の大きさしかないといわれています。
多軸関節の代表格といえば肩甲上腕関節と股関節ですが、股関節の方が関節窩が広くて深いため、肩甲上腕関節よりも骨性の安定が高い構造をしています。
そのため、肩甲上腕関節は股関節以上に軟部組織によって骨性の不安定さを補っています。
肩甲上腕関節の安定化機構とは
肩甲上腕関節の安定は「静的安定化機構」と「動的安定化機構」に分類されます。
静的安定化機構とは
静的安定化機構
・関節唇
・関節包と関節上腕靱帯
・関節内圧
静的安定化機構は、関節唇や関節包・関節上腕靱帯といった軟部組織だけでなく、関節内圧が陰圧に保たれていることで安定を図っています。
軟部組織を全て除去しても1kg程度の下方牽引力ならば、関節内圧によって脱臼しないそうです。
ちなみに股関節は22kg程度の下方牽引力ならば、脱臼しないと言われています。
動的安定化機構とは
動的安定化機構
・腱板
・上腕二頭筋長頭腱
腱板はご存知の通りインナーマッスルと呼ばれ、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋により構成されています。ローテーターカフなんて呼ばれたりもしますね。
腱板は支点形成力に関与するとともに、関節包の張力を効率よく高めて肩関節の求心性を高めています。
上腕二頭筋長頭腱は、肩甲骨関節上結節や関節唇上縁及び後縁から付着し、結節間溝を通過しています。
ご覧の通り、上腕二頭筋長頭腱は上腕骨頭の上方偏位を防ぐのに有効な走行をしています。
そして、この上腕二頭筋長頭腱は”上腕骨の向き”によって緊張が変化します。
下垂位における肩関節内旋位では緊張が低下し、反対に肩関節外旋位になると緊張が増加して上腕骨頭を上方から押さえ込む力が増します。
つまり、肩関節外旋位では腱板同様に支点形成への関与が増すということです。
このことを肩関節の評価に当てはめて考えてみましょう。
腱板機能の評価は多々ありますが、そのうちの一つに「Full Can Test」と「Empty can Test」がありますが、Full Can Testの場合は肩関節外旋位になるため、上腕二頭筋長頭腱の関与も大きくなるということが考えられます。
あくまで一つの要素ではありますが、こういった機能解剖学も踏まえた上で評価をしていくことで、より的確な評価につながりますね。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※参考文献
信原克哉:肩診療マニュアル第3版.医歯薬出版.2004.
赤羽根良和:肩関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社.2013.
坂井健雄監訳:グラント解剖学図譜第6版.医学書院.2011.
肩関節周囲疾患の機能解剖学的病態把握と理学療法.理学療法30(6).2013.
腱板損傷の理学療法.理学療法(32)3.2015.