機能解剖学&運動生理学

頚椎の機能解剖1|頚椎の構造と運動学とは

こんにちは。

理学療法士の中北貴之です。

本日は頚椎についてお話いたします。

頚椎の構造と構成

頚椎は7個の椎骨から成り、やや前弯しています。

第1頚椎と第2頚椎で構成される上位頚椎と、
第3~第7頚椎で構成される下位頚椎に分類され、両者は形態的にも機能的にも異なります。

上位頚椎の特徴

上位頚椎は非常に特徴的な形態をしており、

第1頚椎は「環椎」とも呼ばれるだけあって、全体的に環状の形態をしています。
ちなみに、環椎には椎体はありません。

第2頚椎は「軸椎」と呼ばれるだけあって、横から見ると上方に軸(歯突起)が伸びた形態をしています。

なお、環椎後頭関節(環椎と後頭骨の関節)と環軸関節には椎間板が無いのも特徴の一つです。

第1頚椎、第2頚椎、第7頚椎の違いのイラストVISIBLE BODYで作成

 

下位頚椎の特徴とは

下位頚椎はそれぞれ似たような構造をしています。

特徴としては、鉤状突起が存在してルシュカ関節を形成しており、側方の安定性に寄与していることでしょうか。

加齢に伴い椎間板が変性していくと、椎骨や椎間関節への負担が増加して骨棘形成などの変形につながり、ルシュカ関節にも変形が生じます。ルシュカ関節のすぐ横には横突孔があり、内頚動脈と共に脳へ血液を供給する重要な動脈である”椎骨動脈”が通っていますので、ルシュカ関節の変形は横突孔を狭窄し、椎骨動脈を圧迫する可能性が考えられます。

そのため、一般に広く知られている首をグルグルと回す運動は、40歳を過ぎたら可動域の限界まで無理に動かすことは避けた方が良いかもしれませんね。

鈎状突起と横突孔のイラスト上から見た頚椎 VISIBLE BODYで作成

 

鈎状突起とルシュカ関節

下位頸椎の椎体部は、真ん中が少し窪み、両サイドが少し盛り上がった突起状になっています。その突起が上図の赤丸で囲ってある部分であり、「鈎状突起」と呼び、この鈎状突起が上の椎体と接している部分を「ルシュカ関節(鈎椎関節)」と言います。

頚椎の椎間板は腰椎に比べて変性が10年程度遅いといわれていますが、腰椎には存在しないルシュカ関節が、椎間板への負荷を軽減しているという見解もあります。

 

第7頚椎は隆椎とも呼ばれるだけあって、棘突起が最も後方に突出しており、ランドマークとして使用されやすい部分です。ちなみに、第7頚椎には横突孔はありません。

ルシュカ関節と椎骨動脈のイラストVISIBLE BODYで作成

 

頚椎の運動学とは

頚椎は脊椎の中で最も可動域が大きい部位です。

【屈曲ー伸展運動】
環椎後頭関節が最も可動域が大きい部分。次いで、第5/6頚椎間(以下:C5/6)の可動域が大きい。

※文献によってはC5/6が最も大きいとしているものもあります。

【回旋運動】
環軸関節が最も可動域が大きく、頚椎回旋の50%を担う。

【側屈運動】
C3/4とC4/5が最も可動域大きい部分。

カップリングモーションとしては、下位頚椎では同側型(例:右回旋、右側屈)、上位頚椎は回旋と反対側への側屈を伴っているため、側屈動作では回旋が生じていないように見えています。

頚椎はもともと可動域が大きい部分ですので、制限が生じると「振り返る」「寝返りをする」「水を飲む」などの日常生活動作にも影響を及ぼしますので、適切な可動域を維持するることはとても大事ですね。

そんな大切な頚椎の動きを、誰でも簡単に改善することが出来るエクササイズもご紹介します。

こちらは、猫背&ストレートネック改善ツール『Re-arch spine』という道具を使ったエクササイズです。

一般の方でも、簡単にセルフエクササイズできるのが良いですね。
ストレートネックの改善にも効果的なので、姿勢にお悩みの方にはもってこいです!

頚椎の安定性と呼吸の関係

頚椎を安定させるためには、呼吸機能も関わってきます。

どのように関わるのかを、順を追って確認していきましょう。

そもそも、頚椎に限らず関節を安定させるには「動的安定化機構=筋や筋膜」「静的安定化機構=関節包や靱帯など」が重要になります。

頚椎における動的安定化機構を考えると、ワイヤーシステムによる垂直安定化が重要です。

ワイヤーシステムとは、頭半棘筋・頚半棘筋・斜角筋・胸鎖乳突筋・肩甲挙筋・僧帽筋などによる安定化システムのことです。例えるなら、テントを張るときに四方からロープで引っ張ってテントを安定させるかと思いますが、そのロープの役割が前述の筋群ということになります。

このワイヤーシステムを担う筋の中には、斜角筋・胸鎖乳突筋・僧帽筋などの呼吸に関与する筋も含まれます。(胸鎖乳突筋と僧帽筋は吸気補助筋)

頚椎安定化のワイヤーシステムのイラストVISIBLE BODYで作成

つまり、通常の安静吸気であれば横隔膜が70~80%を担うため、これらの筋はそこまで呼吸には関与しなくてよいのですが、呼吸の乱れが生じることで頚椎安定化に関与する筋の、呼吸への動員割合が増えてきてしまうことが考えられます。

そのため、呼吸機能を改善するということは頚椎を安定させるうえでとても大切になります。

さらに言うなれば、それらの筋が付着する胸郭や肩甲骨の安定化も重要ということになりますね!

結果、全身大切かい!

と突っ込みたくなるかもしれませんが、やはり全身が関わりますよね(笑)

ということで、胸郭アライメントの評価方法の一例をご紹介いたします。

胸郭の評価法とは

胸郭を矢状面から評価する場合のチェックポイントは下記の通りで、骨盤との位置関係も評価しましょう。

  1. 第3胸椎と胸骨柄が平行
  2. 胸骨柄と恥骨結合が垂直
  3. 第10肋骨とASISが垂直
骨盤、胸郭のチェックポイントのイラストVISIBLE BODYで作成

 

さらに身体に関する学びを深めたいという方は、『Pilates As Conditioning Academy』もご覧ください。
https://pilates-as-conditioning.com/

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※参考文献
村木孝行:肩関節痛・頸部痛のリハビリテーション.羊土社.2018.
成田崇矢:脊柱理学療法マネジメント.メジカルビュー社.2019.
頚椎の機能解剖.理学療法27(6).2010.
永木和載:首・肩関節の動きとしくみ.秀和システム.2014.