機能解剖学&運動生理学

膝関節の機能解剖6|下腿過外旋の原因と膝関節への影響

こんにちは。
理学療法士の中北です。

本日は「下腿過外旋の原因と膝関節への影響」についてお話いたします。

下腿過外旋のデメリット

膝のイラスト

変形性膝関節症患者数が約3000万人もいると言われているように、膝は腰と並び障害が生じやすい部分。

膝にしろ、腰にしろ、多くの場合は不安定性が障害につながっており、膝関節においては下腿が過外旋位になることで不安定性が高まります。

なぜ下腿が過外旋すると不安定性が高まるのかというと、前十字靭帯と後十字靭帯の緊張が大きく関与しています。

前十字靭帯と後十字靭帯は、交差するように走行して膝関節を安定させていますが、下腿が外旋位になるほど交差が緩んで緊張が低下することに。

なお、内側側副靭帯や外側側副靭帯は下腿外旋位で緊張が高まりますが、これらは膝関節外に付着している靭帯です。

一方で、前十字靭帯と後十字靭帯は膝関節内で軸の中心に近い部分に付着している為、関節を安定させる作用は側副靭帯に比べて高いと考えられます。

膝周囲の靭帯のイラスト

例えば筋肉のインナーマッスルとアウターマッスルの関係で考えると、分かりやすいのではないでしょうか。

インナーマッスルが十字靭帯で、アウターマッスルが側副靭帯のイメージです。関節軸に近いインナーマッスルの方が、軸がズレないように作用していますよね。

そのため、下腿が過外旋すると前十字靭帯と後十字靭帯の緊張を緩め、膝関節の安定性が低下することで障害にもつながります。

下腿過外旋の原因

それでは、なぜ下腿が過外旋してしまうのでしょうか?

原因を大別すると、体幹部や股関節が膝関節に影響を及ぼす下行性運動連鎖と、足部からの影響による上行性運動連鎖が考えられます。

例えば下行性運動連鎖であれば、股関節が過剰に内旋していることで大腿骨も内旋し、相対的に下腿が外旋位となるパターン。

上行性運動連鎖であれば踵骨回外に伴う下腿の外旋、あるいは踵骨回内による下腿内旋パターンでも生じます。踵骨回内パターンでは運動連鎖によって大腿骨も内旋し、下腿よりも大腿骨の方が内旋角度が大きくなるので、これまた相対的に下腿は外旋位に。

特に高齢者の場合は、距骨が外旋拘縮していることで上行性に下腿が過外旋しているケースも多いようです。

このような下行性もしくは上行性の運動連鎖の結果、鵞足や腸脛靭帯、膝蓋下脂肪体などの膝関節周囲組織に負担が掛かり、痛みとして表出されます。

膝の痛みを訴える方の多くは、歩行や階段昇降などの日常生活動作で痛みを感じていますので、それらの動作で膝に負担をかけている要因がないのかを、膝関節の評価と合わせて行うことが大事ですね。

「膝関節は被害者である」

という言葉もあるように、膝関節は隣接する股関節や足関節の影響を多大に受けます。

そのため、痛みを発している組織へのアプローチを行いながら、その組織に負担を掛けている原因となる部分への介入していきましょう!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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