機能解剖学&運動生理学

肩関節の機能解剖3|肩鎖関節・胸鎖関節とは

肩鎖関節 胸鎖関節

こんにちは。
理学療法士の中北です。

今回は肩鎖関節と胸鎖関節についてお話します。

肩鎖関節と胸鎖関節は、肩甲上腕関節と同様に解剖学的関節に含まれます。

余談ですが、人体には関節が約260個あるといわれています。そんな数ある関節の中でも、関節円板を有する関節はたったの5個しかありません。

そして、その内の2個が肩鎖関節と胸鎖関節です!

肩鎖関節と胸鎖関節の構造と可動性とは

まずは、肩鎖関節と胸鎖関節の構造と可動性について確認していきましょう。

肩鎖関節

肩峰と鎖骨遠位端で構成され、肩甲骨運動の中心軸としての役割があります。

可動性は、

・上下方向に約50°

・前後方向に約30°

・回旋方向に約30°

 

胸鎖関節

胸骨上方部分と鎖骨近位端で構成され、鎖骨運動の中心軸としての役割があります。

可動性は、

・上下方向に約50°(挙上45°,下制5°)

・前後方向に約30°(屈曲15°,伸展15°)

・回旋方向に約55°(後方回旋50°,前方回旋5°)

上記のような特徴と可動性を有しています。

また、肩関節屈曲における鎖骨の運動は、

・屈曲初期では回旋優位で、上方傾斜は緩やか

・屈曲90°以後からは上方傾斜が増加

・屈曲110°以後から後退が始まる

と言われています。鎖骨の動きも肩関節にとって大切ですね。

肩関節の動きとインピジメント症候群とは

さて、肩鎖関節と胸鎖関節は肩甲骨を適正に動かすために連動して働きます。

Inmanらは上肢挙上時の肩甲骨上方回旋は、肩鎖関節における肩甲骨の上方回旋と、胸鎖関節における鎖骨の上方傾斜によって構成されると報告しています。

上肢挙上には肩甲骨の動きも必須ですので、肩鎖関節と胸鎖関節の可動性が低下すると、肩甲骨や鎖骨の動きが低下することになり、肩関節インピンジメント症候群につながったりします。

肩関節インピンジメント症候群とは?

肩関節の動きの中で、骨や軟部組織が繰り返し衝突(インピンジメント)し、その結果として疼痛や組織損傷を引き起こす病態の総称のことです。

肩甲上腕関節の関節腔内で生じる関節外インピンジメントと、肩甲上腕関節の関節腔外で生じる関節内インピンジメントに分類されます。

肩関節インピンジメント症候群の一例

 

肩関節に介入する場合の多くは、「肩が痛い」「肩の動きが悪い」といった主訴に対してかと思います。

抽象的に言えば、上腕骨頭の求心性が崩れることで肩関節の動きの低下や疼痛が生じる為、肩甲骨や鎖骨の動きは肩関節の動きにとって大切ですね。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※参考文献
信原克哉:肩診療マニュアル第3版.医歯薬出版.2004.
赤羽根良和:肩関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社.2013.
肩関節周囲疾患の機能解剖学的病態把握と理学療法.理学療法30(6).2013.
坂井健雄監訳:グラント解剖学図譜第6版.医学書院.2011.
肩関節インピンジメント症候群.臨床スポーツ医学30(5).2013.