機能解剖学&運動生理学

筋の運動生理学3|運動単位とは

こんにちは。

理学療法士の中北です。

本日は「運動単位」についてお話いたします。

運動単位とは

運動単位を表したイラスト基礎運動学から引用

 

運動単位とは、一つの運動ニューロンと、それに支配される筋線維群のことです。

私たちの体幹や四肢の筋は脊髄運動ニューロンによって支配され、頭部や顔面などの筋は脳幹にある運動ニューロンによって支配されています。

一つの運動ニューロンは複数の筋線維を支配しており、その比率を”神経支配比”と言います。

この比率は運動ニューロンによって異なり、眼や指など微細な運動制御を必要とする筋では神経支配比は小さく、大きな力発揮が必要な筋では神経支配比が大きくなります。

神経支配比を、「スイッチと電球」に例えて考えてみましょう。

神経支配比が小さいということは、一つのスイッチで明かりを点けられる電球の数が少ないということですので、一つのスイッチで広範囲を明るくすることは出来ませんが、明るくしたい場所を細かく選択することが出来ます。

一方で、神経支配比が大きいということは、一つのスイッチで多くの電球の明かりを点けられるため、一つのスイッチで広範囲を明るくすることが出来ますが、明るくする場所を細かく選択することは出来ません。

このように、神経支配比が小さいということは微細な運動制御に向いており、神経支配比が大きいということは大きな力発揮に向いています。

実際に、眼筋においては一つの運動ニューロンが5本程度の筋線維しか支配しないこともある一方で、腓腹筋においては一つの運動ニューロンが500本以上もの筋線維を支配している場合もあり、同じ骨格筋でも、およそ100倍もの差が生じます。

眼筋の神経支配比は小さく細かい運動制御が可能で、腓腹筋の神経支配比は大きく大きな力を発揮することが可能となります。

S型とF型とは

一回の運動ニューロンの興奮による筋収縮は、数十~数百ミリ秒で終わり、これを単収縮といいますが、運動単位は単収縮の速さによってS型(Slow Twitch)とF型(Fast Twitch)に分かれます。

S型の運動単位は疲労しにくいが発揮できる力は小さく、F型の運動単位は疲労しやすいが発揮できる力は大きいという特徴があります。

F型の運動単位はさらに、より疲労しやすいFF型(Fast Fatigable)と、比較的疲労しにくいFR型(Fast Fatigue Resistant)に分けられます。

なお、筋線維を酵素活性の特性によって分別すると、タイプⅠ線維・タイプⅡA線維・タイプⅡB線維に分けられますが、それぞれS型・FR型・FF型に対応しています。

タイプⅠは酸化酵素の活性が高く、ATPを効率良く再産生できるため疲労しにくく、タイプⅡB線維は無酸素的分解によってエネルギーを供給しているため疲労しやすいという特徴があり、タイプⅡA線維は両者の中間の性質があります。

つまり、S型はタイプⅠ線維、FR型はタイプⅡA線維、FF型はタイプⅡB線維からなります。

サイズの原理とは

筋の張力の程度は、参加する運動単位の数と、個々の運動単位の発射頻度によって変化します。そのため、大きな張力を発生するためには、参加する運動単位数と、個々の運動単位の発射頻度を増加させる必要があります。

運動単位の発射順序は一定で、小さいサイズの運動単位から活動し、刺激の増強とともに大きなサイズの運動単位が活動に参加します。このような現象を”サイズの原理(size principle)”といいます。

小さいサイズの運動単位であるS型では、発生する張力は小さいが疲労しにくいため、運動中においても一定の姿勢を保つなど、筋張力の微調整に働くといわれます。

大きいサイズの運動単位であるF型では、疲労しやすいが大きな張力を発生させるため、激しい運動時に働くといわれます。

筋収縮で考えてみると、コンセントリックコントラクション(アクセルの役割)では運動単位が小さいものから活動し、徐々に運動単位が大きいものが活動します。一方で、エキセントリックコントラクション(ブレーキの役割)では、運動単位が大きいものが始めから活動するという違いがあります。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

imok株式会社

中北貴之