機能解剖学&運動生理学

筋の運動生理学2|骨格筋収縮と弛緩のメカニズムとは

こんにちは。

理学療法士の中北です。

本日は「骨格筋収縮と弛緩のメカニズム」についてお話いたします。

骨格筋構造の用語確認

筋収縮のメカニズムに入る前に、基本的な用語の確認をしておきましょう。

筋フィラメントのイラストトートラ人体解剖生理学から引用

 

  • ミオシン:太い筋フィラメント
  • アクチン:細い筋フィラメント
  • Z帯:I帯(アクチンのみの部分)の中央にある部分で、アクチンの付着部。筋節。

なお、筋フィラメントの詳しい説明はこちらの記事をご参照ください

https://imok-academy.com/skeletal-muscle-structure/

それでは、本題に入っていきましょう!

骨格筋収縮までの流れとは

筋の収縮メカニズムにおいては、まだ完全に解明はされていませんが「滑り説」が有力とされており、以下のような順番で行われます。

①脳や脊髄にある体性運動神経で発生した電気的興奮が、運動神経線維に伝わる。

②運動神経線維の末端から、アセチルコリンという神経伝達物質が放出される。

③アセチルコリンが筋線維にある受容体に結合し、イオンチャネルが開いてナトリウムイオンが筋細胞膜を通過すると、筋活動電位が発生する。

④筋活動電位が発生すると筋形質膜とT管(横細管)に沿って伝わり、細胞内に伝導する。

骨格筋の構造のイラストトートラ人体解剖生理学から引用

 

⑤筋小胞体のカルシウムイオン放出チャネルが開き、カルシウムイオンが放出される。

⑥筋形質内に流入したカルシウムイオンが、アクチンと結合しているトロポニン分子と結合すると、アクチン上にあるミオシンとの結合部位が露出する。

⑦ミオシン頭部にあるATPase(ATP分解酵素)がATPを分解する過程で、ミオシン頭部にエネルギーが供給される。

⑧ミオシン頭部は、アクチン上のミオシン結合部に付着してクロスブリッジ(架橋)を形成し、リン酸を放出する。

⑨アクチンはミオシンに手たぐり寄せられ、滑るようにミオシンの間に引き込まれていく(滑り説)。

⑩Z帯とZ帯の距離が近づき、筋の収縮が生じる。

以上が筋収縮のメカニズムです。

このような、筋線維が興奮してから収縮するまでの一連の反応を、「興奮収縮連関:Excitation Contraction Coupling」といいます。

筋の弛緩とは

続いて、筋が弛緩するメカニズムをご説明いたします。

①運動神経線維からのアセチルコリン放出が終了する。

②アセチルコリンはコリンエステラーゼによって分解され、筋線維は興奮状態から脱する。

③トロポニンに結合していたカルシウムイオンは筋小胞体に取り込まれ、クロスブリッジが解除されて筋は弛緩する。

このような流れで筋は弛緩し、元の状態に戻ります。

ところが、筋小胞体にカルシウムイオンが上手く取り込まれないと、筋線維自体は興奮状態から脱しても、クロスブリッジが解除されないため、筋は弛緩できません。

つまり、カルシウムイオンの取り込みが筋の弛緩には必要ということです。

カルシウムイオンの取り込みを阻害する要因としては、「関節固定による不動状態」「筋線維内のATP枯渇」などが挙げられます。

そのため、骨折などで関節を長期間固定していたり、末梢循環障害などで血流が阻害されたりすると筋肉は硬くなってしまい、関節可動域を制限する要因となります。

ちなみに、死後硬直を筋線維内のATP枯渇によって生じます。刑事ドラマで「死後硬直」という言葉が出てきたら、カルシウムイオンの取り込みが出来ずにクロスブリッジが解除されていないんだな~と思い出してください。

また、これらの原因に加えて栄養状態も関与します。カルシウムと連係して働くマグネシウムが不足することでも、カルシウムイオンの放出が滞って筋が弛緩できなくなりますので、筋肉が硬くなりやすい方には、栄養の観点から介入することも効果的かもしれませんね。

 

本日は「骨格筋の収縮と弛緩のメカニズム」についてお話いたしました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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