神経系と感覚器のしくみ

視力と視覚|運動指導者の為の目と視覚の基本

こんにちわ

トレーナーの小林俊夫です

本日は視力と視覚について

子どもの頃から視力検査はしたことがあるけれど、それ以外の視覚に関わる検査をしたことは無い方が多いのではないでしょうか?

近年、スマートフォンの普及に伴い、視覚に問題を抱えている方が多く、評価に基づいて色々とエクササイズをしてみたけれど、なかなか良くならないといった場合、視覚が原因だったりします

 もちろん、眼科医や視能訓練士やオプトメトリストの方々をはじめ、目や視覚の専門家の方にお任せ出来るのが一番ですが、先ずは気が付く事が出来ないと、紹介をする事も出来ませんので、僕ら運動指導者も基本的なことを学んでおけると良いですよね

視力と視覚の違いとは

 まず、「視力」というのは「視覚」の中の一部の能力になります

言い換えると、視るという能力の一部であり、他にも色々な能力があるということですね

 

その為、階層で考えると

視覚

視力

という考え方になります

視力:対象そのものを明確に見る力

視覚:視力を含め、様々な目の働きをまとめて視覚といい、視野(視界を広く見る能力)、光覚(光を感じる能力)、両眼視(両眼で立体的に物を見る能力)、色覚(色を見分ける能力)、調節力(遠方から近い物までを見るための調節をする能力)などを含む

参考:視能訓練学 医学書院

ちなみに、視力検査で用いる輪っかを「ランドルト環」と言い、約100年前くらいにランドルトさんという人が創ったと言われています

 現場では、視力検査では問題が無いけれど、視覚に問題がある為に、姿勢や動きに影響が出ている方が多いと感じます

眼球の基本構造と役割

より詳しく視覚についてお話をさせて頂く為に、まず眼球の基本的な構造と役割から見ていきましょう!

角膜:光を通す透明な膜

虹彩:黒めに当たる部分。瞳孔の大きさを変えて、入ってくる光量を調節する

毛様体:水晶体の厚みを変化させて屈折率を調節

水晶体:毛様体筋の収縮&弛緩によって厚みが変化し、光の屈折率を調節する

結膜:眼瞼の裏に位置する薄い粘膜。眼球保護の役割がある

強膜:眼球の外側を囲んで形状を保つ厚い膜

硝子体:眼球の大部分を占めるゲル状の組織。眼圧を維持し、外力に対してクッションとして働く

脈絡膜:強膜と網膜の間にある薄い膜。瞳孔以外からの余分な光を吸収する。膜内の血管が眼球や網膜に酸素や養分を補給する

網膜:光受容器である視細胞が存在 

上記の様な構造と役割になっています

視覚を構成する能力

視覚は様々な能力によって成り立っていますので、それぞれについて一緒に学んでいきたいと思います

「視野」

簡単に言うと眼球を動かさずに見られる範囲のこと

片目の視野を「単眼視野」、両目の視野を「両眼視野」と呼び、それぞれに「中心視野」と「周辺視野」がある

片眼での正常視野は大人で外方100度、下方70度、上方60度程度。両眼での正常視野は左右200度、上下130度であり、草食動物であるウサギの周辺視野は約360度

中心視野:網膜像が中心窩に映る様な条件下で対象を見る事を「中心視」(1~2度の範囲)と呼びます。中心窩には、錐体細胞が集まっていて解像度が高く、細かな違いを判別出来ます。文字が読めるのは約2~3度、色の違いは約20~30度の範囲まで分かる。

周辺視野:中心視野以外の部分を周辺視野といい、全体像を大まかに把握して、危険を察知します。解像度は低い為、細かな違いを判別したりすることは苦手。

錐体細胞:網膜の中心である黄斑部に集中して存在し、約600万個あるとされる。  強い光に反応し、主に色(光の波長)を感じる機能を持つ。網膜に届いた光から波長の違いを感じ取り、その情報を電気信号に変えて大脳に送る。赤、青、緑の波長を感じ取る細胞がある

桿体細胞:光の情報を電気信号に変える働きをする視細胞網膜の周辺部に多く分布し、1億個以上あるとされている。弱い光に敏感に反応する為、暗い場所でものを見る時に働くが、光の波長の違いには反応しない為、色の識別は出来ない

 私達が歩いている時、周辺視野によって周りの環境はもちろんのこと、地面や腕の振りなども無意識に捉えていて、それによって自然な歩行が行えています

その為、より良い歩行を考える場合、周辺視野などは重要なポイントになります

両眼視機能

両眼を強調させてバランスよく使うことを両眼視機能といい、両眼でものを1つにハッキリと見えることが大切

両眼視機能には、同時視、融像、立体視の三分類があり、最終的には立体感や奥行き感など、3Dを感じ取れることが大切で、両眼間のわずかな視差が立体視の情報をもたらします。両目の視力や眼位が正常でないと両眼視機能は不完全になります

クロードワースの両眼視機能の三分類

同時視:左右の網膜に異なった像が映った時に、同時に統合して見ることが出来る能力

融像:左右の網膜に映った像を、1つのものとして見ることが出来る能力

立体視:両眼視差によって立体的に見る能力

ここら辺は、目の専門家に任せればよいかと個人的には考えています

 そして、この後の調節力と関係が深い部分でもありますが、「輻輳力」というものも重要です

輻輳と開散 

何かものを視る為には、ピントを合わせる事と同時に、いわゆる「寄り目」を創る様に、両方の眼を内側に寄せる必要があり、これを「輻輳(ふくそう)」

逆に輻輳した状態から、眼球を元の位置まで戻す事を「開散(かいさん)」と言います

調節力

遠方から近い物までを見るための、いわゆるピントを調節をする能力

目に入ってくる光は、角膜、水晶体を通り、眼の奥にある網膜に届きます。そして、この網膜でピントが合う様に、毛様体によって水晶体の厚みを調節する能力のことです

ちなみに遠くのものを見る時は、水晶体を薄くしてピントを合わせ、近くのものを見る時は、水晶体を厚くしてピントを合わせています

こうした、ピント調節や輻輳などは、赤ちゃんの時の原始反射も大きく関わり、特に対称性緊張性頸反射などでは、頭頚部の伸展に伴い遠くを見て、頭頚部の屈曲に伴って近位を見る為、遠位と近位のピント調節などを学習していることが考えられますよね

光覚&色覚

光覚:光を感じて、明るいー暗いなど強さを区別する能力のこと

明るい所から、暗い所に移動した際に、弱い光を感じるまでの時間の経過を暗順応といって、この暗順応が障害された状態が、ビタミンAの欠乏症として知られる「夜盲症」

人参やカボチャなどでβカロテンを摂る事がおススメですね

色覚:色を見分ける能力のことで、錐体細胞で光の波長を感じ取って、それを脳へ伝えて色を感じています

 

トレーナーにおススメの書籍

視覚について一緒に見てきましたが、視覚へのアプローチは、身体への影響も大きい為、しっかりと学んでからでなければ、基本的には眼の専門家の方にお任せするのが良いと思います

 しかし、こうした観点を持っていると、もしかして視覚の問題かもしれないから、一度専門家に診て貰おうと考えることが出来ますよね!

そして、視覚などに興味を持ち、運動指導者の方が学ぼうと思った時に、以下の書籍などはおススメです

 

「発達障害の子どもを伸ばすビジョントレーニング」

 

体系立てて学ぶ場合は、こちらの「視能訓練学」などが良いかと思います

 

少しでも参考になれば幸いです

もし、眼の専門家の方がお読み頂いて、何か誤りなどございましたら、ご教示頂ければ嬉しく思います