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歩行の神経機構1|自動的歩行の神経機構

こんにちは。
理学療法士の中北です。

今回のテーマは『自動的歩行の神経機構』について。

歩行には、自動的な面と随意的な面がありますが、今回は自動的な部分に焦点を当てていきたいと思います。

随意的歩行と自動的歩行

まずは、随意的歩行と自動的歩行の違いについて確認していきましょう。

例えば、目的の場所に向かって歩き始めたり、歩行中に障害物を避けたりするような歩行動作は、脳の高次機能によって作り出される”意図”や”意思”が必要ですよね。このような歩行は随意的な歩行といえます。

一方で、歩行中の手の振りや足の運び、姿勢の保持などは、意識には上らない自動的な歩行といえます。

随意的な歩行は、大脳皮質に伝達された体性感覚や視覚などの感覚情報が、大脳皮質の連合野で処理されて生成されます。

例えば、道を歩いていて10cmくらいの段差があったら、視覚によって段差を認知し、転ばないように避けよう、という運動プログラムを大脳皮質で生成するわけですね。

なお、このような運動プログラムの生成には、大脳基底核や小脳なども深く関わってきますが、詳細は随意的歩行の記事でご説明していきますので、今回は自動的歩行についてより詳しく確認していきたいと思います。

脳幹の歩行誘発野

歩行誘発野の解説イラスト歩行誘発野:身体適応ー歩行運動の神経機構とシステムモデルより引用

歩行運動の発現や、自動的にリズミカルな歩行を繰り返すためには、中枢神経系の歩行誘発野が関わります。

現在のところ、
・中脳歩行誘発野(MLR:Midbrain or mesencephalic locomotor region)
・視床下部歩行誘発野(SLR:Subthalamic or diencephalic locomotor region)
・小脳歩行誘発野(CLR:Cerebellar locomotor region)

の3つの歩行誘発野が同定されており、それぞれの歩行誘発野が歩行リズム生成系と姿勢筋緊張制御系を駆動することで、自動的歩行は実行されます。

大脳辺縁系や交感神経系との関連から、情動的プロセスとしての「逃走」に深く関与しているといわれるのが、中脳歩行誘発野。

中脳歩行誘発野を連続して刺激すると、それまで座っていた動物が立ち上がって歩き出すことが分かっています。

視床下部歩行誘発野は、摂食や捕食に関与しているといわれており、この部位を刺激すると探索や獲物を狙うような歩行が誘発されます。

また、小脳歩行誘発野を刺激すると中脳歩行誘発野と同様の歩行を誘発するだけでなく、姿勢筋緊張も増加します。

これらの歩行誘発野は、先述の目的地に向かって歩行を開始するような随意的歩行ではなく、情動に伴うような歩行の開始に関与しているということですね。

脊髄のCPG

CPGの解説イラストCPG:身体適応ー歩行運動の神経機構とシステムモデルより引用

歩行誘発野からの信号が、網様体脊髄路を介してCPG(central pattern generator)を駆動し、リズミカルな四肢の運動が行われています。

CPGを構成するのが、皮膚反射や屈曲反射を媒介する脊髄内の介在細胞群。

CPGからの信号が、歩行パターンを生成する介在細胞に伝達され、さらに運動細胞にも伝わっていきます。

CPGは「感覚入力や上位中枢からの指令なしに、周期的な運動パターンを生成する神経システム」と定義されていますが、最近では求心性の感覚入力が重要な役割を果たしていると考えられています。

中でも重要なのが、歩行中に絶えず変化する筋の長さや張力といった情報を伝えている筋紡錘。

とりわけ、股関節の運動に伴う感覚情報は、CPG活動に大きな影響を与えているとされています。

立脚期後半に股関節が伸展される際の筋紡錘からの求心性入力が、股関節屈筋群の活動を促し、遊脚期へと転換していくと報告されていますので、適切に股関節を伸展できるか否かは歩行動作において重要だということですね。

 

今回は、自動的歩行の神経機構についてお話いたしました。

脊髄のCPGが駆動するためには、筋紡錘からの求心性入力も重要なので、普段から身体を動かし、感覚入力が適切に行われるようにすることも、歩行には大切ですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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