神経系と感覚器のしくみ

視床下部|自律神経と内分泌

 こんにちわ

本日は間脳の視床下部について、一緒に学んでいきましょう

 視床下部は、自律神経系のコントロールセンターであり、ホメオスタシスの維持に関わると同時に、下垂体と連携して内分泌の働きもコントロールしています

更には大脳辺縁系からの影響を受け、情動反応にも関わります

 例えば、暗闇を歩ている時に、後ろからいきなり声を掛けられると、聴覚からの刺激により、大脳辺縁系で恐怖などの情動が生まれ、大脳辺縁系から視床下部に指令がいくことで、交感神経にスイッチが入り、一気に心拍数や血圧が上昇したり、汗をかいたりして、危険に対応出来る様にします

その為、視床下部は、自己防衛や、種の保存にも重要な役割を果たすと考えられます

視床下部の構造と位置

視床下部がどこなのか?というと、視床の下方に位置して、第三脳室が下垂体に向かって突出している30以上の核群のことを指しています

多くの神経連絡や機能を持ちますが、4g程度の脳全体の1%にも満たない非常に小さい部位になります

 視床下部は、第三脳室と接している視床下部周囲層、外側の視床下部内側野、最も外側にある視床下部外側野の3つの領域に分けられ、それぞれの部位に核群が存在しています

ホメオスタシスと視床下部

ホメオスタシスとは、生体恒常性のことであり、生体環境を一定に保とうとする働きのことです

 どの様にホメオスタシスが保たれているか?というと、自律神経系の働きと、いわゆるホルモンの分泌に関わる内分泌系の働きによるものですが、その2つを司っているのが視床下部になります

 視床下部の下には「下垂体」と呼ばれる部分がありますが、この下垂体に繋がる漏斗という部位にある「漏斗核」が、ホルモン系をコントロールする中心部位です

下垂体とホルモン分泌

副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、性腺刺激ホルモン、乳腺刺激ホルモンなど、多くのホルモンを分泌する内分泌器官。ホルモンの産生機能を持つ、前葉にあたる「脳下垂体」とホルモンの放出機能を持つ後葉の「神経下垂体」と中間葉に分けられる

漏斗核は、下垂体のホルモン分泌を促進させる「放出ホルモン」と、分泌を抑制させる放出抑制ホルモンを分泌しているが、まだ詳しくは解明されていない部分もある

視床下部のホルモンと下垂体前葉のホルモン

視床下部からは、神経性の出力と液性の出力が存在する

神経性の出力は、大脳皮質への出力と、脳幹や脊髄にある運動中枢や自律神経中枢への出力があり、液性出力には、体循環系へ直接分泌をする場合と、視床下部と下垂体前葉を結ぶ血流路である「下垂体門脈系」を介して間接的に分泌をする場合がある(視床下部ホルモンが下垂体門脈系に入り、下垂体前葉へ運ばれることで、ホルモン分泌などをコントロールしている)

 下垂体前葉から出る6種類のホルモンに対応した放出ホルモンが視床下部から放出をされることで、分泌量を調整している

視床下部ホルモン

  • 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)
  • 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)
  • 成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)
  • 成長ホルモン抑制ホルモン(GHIH)
  • プロラクチン放出ホルモン(PRH)
  • プロラクチン抑制ホルモン(PIH)
  • ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)

下垂体前葉ホルモン

  • 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH)
  • 成長ホルモン(GH)
  • プロラクチン(PRL)
  • 卵胞刺激ホルモン(FSH)
  • 黄体形成ホルモン(LH)

下垂体後葉とホルモン

下垂体後葉では、体循環系に抗利尿ホルモン(ADH)と呼ばれるパゾプレシンと、子宮平滑筋と乳腺の筋上皮細胞の収縮を引き起こすオキシトシンを分泌する(出産時に陣痛を引き起こしたり、赤ちゃんが乳首を吸う事で分泌が促されて母乳が出る)

パゾプレシンは、欠乏すると腎臓での水の再吸収が不十分になり、尿量が著しく増加します(尿崩症)

オキシトシンは、ハグや手を繋ぐなどのスキンシップで分泌をされ、抗ストレスホルモンや摂食抑制としても有名

 また、麻布大学の菊水教授の研究では、飼い犬と見つめ合う事でもオキシトシンが分泌されることが分かっています

抑制系ニューロンの代表格でもある、GABAニューロンを活性化する作用を持ち、精神的安らぎを与えるといわれるセロトニン作動性ニューロンの働きを促進して、ストレス反応を抑え、人との交流や社会的活動に対する不安を減少させることなどが考えられます

 また、オキシトシン受容体が欠損したネズミでは、異常な肥満体になるのが見られることから、摂食のコントロールやエネルギー代謝に関わっていることが考えられ、実際、オキシトシンは、迷走神経から延髄にある孤束核を介して、摂食中枢に働きかけて、食欲を抑制する経路があることが分かってきています

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