機能解剖学&運動生理学

足関節・足部の機能解剖3|ロッカーファンクションとは

こんにちは。
理学療法士の中北貴之です。

本日は歩行時のロッカーファンクションについてお話いたします。

ヒトの特徴の一つが直立二足歩行ですね。
ヒトは直立二足歩行を獲得したことで、移動効率が飛躍的に良くなりました。

仮に、皆さんが歩いて1時間移動してくださいと言われたら、ちょっと大変だけど歩けますよね。しかし、四つ這い位で1時間移動してくださいと言われたら、ほとんどの人が無理だと思うのではないでしょうか。

なぜなら、四つ這い位は移動効率が良くないので、1時間も動き続けるというのはカラダに相当な負荷がかかるためです。一方、直立二足歩行は移動効率がとても良いということですね。

そんなありがたい直立二足歩行において移動効率を高めている仕組みが、足関節と足部における3つの回転軸。これを歩行におけるロッカーファンクションといいます。

ロッカーファンクションは、

  • ヒールロッカー(Heel Rocker)
  • アンクルロッカー(Ankle Rocker)
  • フォアフットロッカー(Forefoot Rocker) 

に分かれますので、それぞれ確認していきましょう。

ヒールロッカー|Heel Rocker

ヒールロッカーは、踵接地から足底接地にかけての、踵を中心とした回転運動のことです。

立脚初期は体重の1.2倍~1.5倍の負荷がかかると言われていますが、適切に衝撃を吸収できないと負荷はさらに大きくなり、関節や内臓、脳へのダメージが大きくなります。

ここで活躍するのがヒールロッカーです。

踵接地から足底接地にかけて、足関節は軽度背屈位から底屈位になっていきますが、この時に前脛骨筋など背屈筋群の遠心性収縮によって足関節が底屈していくのに対してブレーキをかけます。

これによって足底接地までの時間を遅らせ、衝撃吸収の一助となります。

踵骨が丸くて大きいのには、理由があるんですね。

前脛骨筋のブレーキ作用のイラストVISIBLE BODYで作成

 

ちなみにこの時、膝関節における大腿四頭筋や、股関節における外転筋群も遠心性収縮して衝撃吸収を担っています。

アンクルロッカー|Ankle Rocker

アンクルロッカーは、足底接地から踵離地にかけての、足関節を中心とした回転運動のことです。

アンクルロッカーのイラストVISIBLE BODYで作成

 

踵接地から足底接地にかけては膝関節は屈曲位となっていますが、前方への推進力を生み出すためには膝関節が伸展していく必要があります。

この時の膝関節伸展は、股関節と足関節の協調した働きによって起こります。

アンクルロッカーの初期に、下腿三頭筋など底屈筋群の遠心性収縮により脛骨の前方回転にブレーキがかかります。同時に股関節では大殿筋や大内転筋により大腿骨が伸展方向に回転します。

その結果、回転速度の落ちた脛骨の上に大腿骨が乗り上げるような形で、膝関節が伸展して前方への推進力形成につながります。

フォアフットロッカー|Forefoot Rocker

踵離地から足尖離地にかけての、MTP関節(中足趾節関節)を中心とした回転運動のことです。

立脚中期から立脚後期にかけて、反対側の下肢は前方に振り出している真っ只中です。

そのため、反対側下肢が十分に前方に振り出されるための時間が必要になります。

ところが、足関節を中心とした回転運動では身体が前方へ回転していくにつれて、重心位置が下降していきます。

そこで、MTP関節を中心とした回転運動に切り替えていきます。

それによって、反対側下肢の前方への振り出しの時間を作ることができ、接地の準備を整えることができます。

 

 

フォアフットロッカーのイラストVISIBLE BODYで作成

足部アライメント改善エクササイズ

このように、ロッカーファンクションが効率の良い直立二足歩行を可能にしています。

ところが、そもそも足部のアライメントが崩れてしまっていると、ロッカーファンクションは適切に機能しません。

例えば足部内側縦アーチが低下している場合、踵骨接地後に通常よりも早く内側に足圧中心が移動してしまうため、ヒールロッカーファンクションが機能しないことに。

また、フォアフットロッカーの相で考えても、足部のアライメントが崩れていたらMTP関節での回転運動のタイミングもズレるので、ロッカー機能は適切に作用しなくなります。

そのため、適切なロッカーファンクションのためには、足部アライメントを整え、足部アーチを適正化することが大切です。

 

本日はロッカーファンクションについてお話してきました。

直立二足歩行が出来るようになって、移動効率を良くするだけでなく、両手が自由になることで道具の操作も可能になったわけですが、足関節や足部の進化も大いに関わっているということですね!

さらに身体に関する学びを深めたいという方は、『Pilates As Conditioning Academy』もご覧ください。
https://pilates-as-conditioning.com/

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※参考書籍および文献
入谷誠:入谷式足底板.運動と医学の出版社.2011.
・片寄正樹:足部・足関節理学療法マネジメント.メジカルビュー社.2018.
・石井慎一郎:歩行の臨床バイオメカニクス【改訂版】.南西書店.2012.
・足関節・足部疾患の機能解剖学的病態把握と理学療法.理学療法31(2).2014.