こんにちは。
理学療法士の中北貴之です。
本日は肩関節の機能解剖についてお話します。
「機能解剖~肩関節編~」の初回ということで、まずは全体像からみていきましょう。
肩関節複合体とは
肩関節は上腕骨・肩甲骨・鎖骨の3つの骨性要素と、それに付随する軟部組織によって構成されています。
よく「肩関節複合体」なんていわれますね。
一般の方は”肩”といえば肩甲上腕関節のことを指すかと思いますが、前述の通り複数の骨が関与しますので、当然ながら関節も複数になります。
そして、肩関節複合体は「解剖学的関節」と「機能学的関節」に分かれます。
解剖学的関節
滑膜や関節包が存在する本来の関節構造をしている。
・肩甲上腕関節
・肩鎖関節
・胸鎖関節
機能学的関節
滑膜組織は存在せず、解剖学的関節の機能を補助する。
・肩甲胸郭関節
・C C メカニズム
・第2肩関節
肩甲上腕リズムとは
時は1930年、Codmanが初めて肩甲上腕リズムに関する報告したと言われています。
その後、Innmanらがその割合は「上腕骨:肩甲骨=2:1」と報告して一般的な見解となりました。
が、しか~し!
その後も肩甲上腕リズムに関する様々な研究がなされ、その比率も挙上角度によって異なることが分かっています。
例えば、竹井氏らは側臥位での肩関節屈曲において、
・0°~90°は約2.7:1
・90°~150°は約1.6:1
・150°~170°は約1.4:1
という報告をしています。
他にも、近氏らによると外転25°では2:1だが、挙上角度が増大するにつれて比率は低下し、肩甲骨の運動が大きくなるとしています。
とにもかくにも、研究者によって数値の違いや動態の違いはありますが、
・下垂位に近いほど上腕骨の動く割合が多い
・挙上位になるほど肩甲骨の割合が多くなる
ということは共通しているようです。
肩甲上腕リズム適正化のためのエクササイズ
肩甲上腕リズムの割合に関しては、現段階では諸説あるようですが、大切なのは上腕骨に対して肩甲骨が追従して動くことです。
そのために大切なのが肩甲胸郭関節の機能改善ですが、そもそも脊柱の生理的弯曲は保たれているか?肩甲骨のアライメントはどうか?骨盤と胸郭の位置関係はどうか?
といった評価が必要となり、現代人に多く見られるような中位胸椎の平坦化があれば、まずは脊柱のアライメント改善の介入が必要ですね。
ということで、中位胸椎の屈曲を促すうえでオススメのエクササイズをご紹介いたします。
この「ベリーリフト」というエクササイズは、広背筋や脊柱起立筋のストレッチと共に、前鋸筋や腹斜筋群を促通できるので、中位胸椎の屈曲を促すのにとても効果的です!
また、エクササイズの効果を最大限に引き出すためには、”エクササイズに注意を向ける”ことが重要です。
下の写真にあるような「ピラティスチェア」というツールを使うと、複雑性や強度を変化させることが可能なうえ、マットエクササイズではまず無い動きとなるため、自然とクライアントの注意を向かせることが出来ます。
クライアントのマンネリ打破ということを考えると、様々なツールがあると良いですね♪
ちなみに、こちらのエクササイズでは足を置く部分にスプリングが付いていて、動作を”アシスト”しています。ピラティスチェアは多くのエクササイズバリエーションを作れるうえに、場所も取らないのでエクササイズツールとしては大変おすすめです!
さらに身体に関する学びを深めたいという方は、『Pilates As Conditioning Academy』もご覧ください。
https://pilates-as-conditioning.com/
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※参考文献
信原克哉:肩診療マニュアル第3版.医歯薬出版.2004.
赤羽根良和:肩関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社.2013.
肩関節周囲疾患の機能解剖学的病態把握と理学療法.理学療法30(6).2013.