栄養&消化&免疫

避ける油と、摂るべき油

こんにちは。
分子栄養学認定カウンセラーの千野ひとみです。

油は、「太る」や「健康リスクが高い」といったイメージが先行し、一方的に悪者扱いされているように感じますが、現代の食生活を考えた時に、避けるべき油もあれば、積極的に摂取すべき油もあります。

今日は、油の選び方について考えていきましょう。

油の必要性

私たちが普段摂取する油は、肉や魚、植物に含まれるもの、食材を調理する時に使うサラダ油、風味付けに使われるごま油など、様々な種類があります。

最近では、オリーブオイルやエゴマ油、ココナッツオイルやMCTオイルなど、実に多くの種類のものが販売されるようになりました。
それだけ、油の重要性が認識されてきているということだと思います。

油(脂質)は、私たちの身体には欠かせない栄養素のひとつであり、下記のような働きをもちます。

  • 身体のエネルギーになる
  • 細胞膜の成分にになる
  • 生理活性物質を分泌し、身体の機能を調整する

避けるべき油

上記のように、油は、必要なものである一方、できるだけ避けた方が良いものもあります。

トランス脂肪酸

まず、避けるべき油は「トランス脂肪酸」です。

トランス脂肪酸とは、主に水素添加という方法で、液体状の油を固形状に変える時に発生する物質です。
安く、安定性が高いため、お菓子やデザート類といった加工食品などに多用されています。

https://imok-academy.com/trans-fatty-acids/

油は、細胞膜の成分となるため、硬く安定した状態のトランス脂肪酸が細胞膜となることで柔軟性が失われ、脳神経細胞の機能低下や赤血球の膜の流動性が低くなるといったことが考えられます。
そのため、アルツハイマーや冠動脈疾患のリスクが高まってしまいます。

オメガ6脂肪酸

脂質を構成する要素である脂肪酸の種類には、オメガ3やオメガ6、オメガ9といったものがありますが、現代食は、オメガ6が多く使われています。

コストが低いオメガ6は、家庭や外食産業に多く流通しており、私たちは意識せずともオメガ6をたくさん摂取しています。
一般的にサラダ油と呼ばれる、炒め物や揚げ物に使われるような油には、オメガ6脂肪酸が多く含まれます。

オメガ6の油は、必須脂肪酸と呼ばれ、私たちには必要なものではあるのですが、摂取量が多くなりすぎていることが問題です。

少しでも摂取量を減らせるよう、意識して選ぶことが大切です。

摂るべき油

避けるべき油がある一方で、積極的に摂るべき油もあります。

オメガ3脂肪酸

主に魚の油に含まれるオメガ3脂肪酸は、是非積極的に摂取してほしい油です。
DHAやEPAと呼ばれるもので、最近では、サプリメントなどでも販売されていますね。

DHAは脳の神経細胞を活性化し、記憶力向上に効果があるといわれ、EPAは動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞などを予防するともいわれています。

そして、様々な生活習慣病の原因となる、体内の炎症を抑える働きがあります。
炎症とは、体内での免疫反応であり、ウィルスなどの異物排除が終われば終息に向かうべきものですが、炎症が続いてしまうと、自己免疫疾患やアレルギーなどの疾患原因となります。

オメガ6は炎症を引き起こし、オメガ3は炎症を鎮静化させる働きをもちます。

先程お伝えしたように、現代では、オメガ6の多い食事になりやすく、炎症が起こりやすい状態になっていますので、オメガ3の積極的な摂取がおすすめです。

オメガ3脂肪酸を体内で合成できるマウスをつくり、心臓に持続的な圧負荷を与えた時、野生型マウスと比較して、心不全になりにくいという研究結果もあります。
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20140721-2/index.html

さらに、栄養学的なアプローチとしては、亜麻仁油と大豆油の摂取群を比較した場合、亜麻仁油摂取群では、食物アレルギー症状が緩和するという結果の得られた研究もあります。

オメガ3の代謝物質が炎症を抑える

EPAを元にして産生される代謝物が、炎症を抑えるという研究が行われています。
EPAの代謝物、18-HEPEという物質は心不全に対して抑制的な効果を生み、17,18-EpETEという物質は食物アレルギーに寄与する機能性の代謝物質であるということがわかっています。
オメガ3の代謝物質には機能性があり、その多くが抗炎症作用をもちます。

脂質のバランスは、食べ物で決まる

このように、油には種類があり、避けるべきものと、摂るべきものがあります。

オメガ6とオメガ3は、構造でみるとほんの少しの違いなのですが、体内での作用は、全くの別物です。
私たちは、体内で油の質を変えることはできず、オメガ6をいくら摂取しても、オメガ3のEPAには決して変換されず、その逆もまた同様です。

そのため、体内のオメガ6とオメガ3のバランスは、摂取した脂肪酸に100%由来します。

魚を食べず、ファストフードや加工食品、外食の多い食生活をしていては、オメガ6の比率が増え、身体は炎症体質になります。

エゴマ油やアマニ油を、サラダにかける等、日頃から意識して、積極的にオメガ3脂肪酸を摂取することが大切です。