機能解剖学&運動生理学

腰部の機能解剖4|腰痛概論

腰痛のイラスト

こんにちは。
理学療法士の中北貴之です。

腰部の機能解剖は3話完結の予定だったのですが、運動指導に携わる皆様は腰痛にお悩みの方と接する機会も多いかと思いますので、腰痛についてもお話させて頂こうかと思います。

腰痛の疫学とは

腰痛は成人の80%が経験するとも言われるほど、多くの方が経験します。
30人の職場だとしたら、その内の24人が腰痛を経験するとはすごい確率ですね。

平成28年に厚生労働省が報告した「国民生活基礎調査」において、腰痛は有訴者率で男性第1位、女性第2位となっています。

データからも身近な疾患であることが分かりますね。

 

男性の有訴者率のグラフ平成28年厚生労働省国民生活基礎調査を参考に作図
女性の有訴者率のグラフ平成28年厚生労働省国民生活基礎調査を参考に作図

腰痛の原因とは

腰痛の原因としては、多くのことが考えられます。

腰痛の原因

①脊椎由来
②神経由来
③心因性由来
④内臓由来
⑤血管由来

単純に腰痛=筋骨格系の問題だけではないということですね。

腰痛で医療機関を受診する方の中で、80%~90%の方は原因不明とされています。

それなら、医療機関を受診しても原因が分からないなら行かなくていいわ!
とは思わないでください。

80%~90%が原因不明ということは、10%~20%の方は原因が明確であるということであり、原因が明確な腰痛には生命の危険に関わる疾患も含まれますので、注意が必要です。

鑑別が必要な腰痛とは

具体的な例を挙げると以下の形になります。

鑑別が必要な腰痛

①腫瘍(原発性、転移性脊椎腫瘍)
②感染(化膿性脊椎炎、結核性脊椎炎など)
③外傷(椎体骨折など)
④神経症状を伴う疾患(ヘルニア、狭窄症など

①②は運動介入など論外ですし、③④に関しても急性期は運動介入することで悪化させてしまう可能性が高いですね。

どれも確定診断するには血液検査や画像診断が必要な疾患ですし、命に関わる疾患も腰痛の訴えの中には潜んでいます。

医師以外では鑑別は不可能ですので、問診をしていて怪しいと感じたら医療機関の受診を勧めた方が良いですね。

腰痛で気をつけること

脊椎疾患における危険信号は下記の通りです。

・発症年齢が20歳以下または50歳以上
・時間や活動性に関係のない腰痛
・胸部痛
・癌、ステロイド治療、HIV感染の既往
・栄養不良
・体重減少
・広範囲に及ぶ神経症状
・構築性脊椎変形
・発熱

症状的には「安静時痛」や「姿勢変化や体動によって変化しない痛み」は気をつけた方がよいとされています。

いつになく真面目な話になりましたが、それほど痛みに関わるうえでは重要なことであると思います。

お客様のためであることはもちろん、自己防衛のためにも大切です。

運動指導者や治療家の方は目の前の方を良くしてあげたい!という想いが強い方が多いかと思います。

だからこそ、運動や徒手で介入してよい腰痛なのかを鑑別することが大切ですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※参考文献
非特異的腰痛で知っておきたいこと.Monthly Book Orthopaedics26(12).2013.
腰椎・腰部の機能解剖.理学療法28(5).2011.
荒木秀明:非特異的腰痛の運動療法.医学書院.2014.
福林徹:腰痛のリハビリテーションとリコンディショニング.文光堂.2011.